第175臨時国会が30日、召集された。会期は8月6日までの8日間だが、ねじれ国会と内閣支持率の低迷で、菅直人政権が法案を通せず立ち往生する事態が、現実味を帯びている。いまや政権維持の唯一の希望と言えそうなのが蓮舫行政刷新相(42)による事業仕分けだが、ねじれはここも直撃。仕分け結果を実現するには法改正が必要なことが多いためで、蓮舫ピンチといった状況なのだ。
参院は午前10時から本会議を開き、議長に民主党の西岡武夫議院運営委員長(74)、副議長に自民党の尾辻秀久氏(69)をそれぞれ選出。西岡氏の後任には自民党の鈴木政二参院国対委員長(62)が選ばれた。
来月2〜5日までの間、菅内閣発足以来初となる予算委員会が開かれるが、野党側は民意により参院選で落選したのに留任した千葉景子法相(62)や、キャミソール荒井聡国家戦略相(64)の政治資金問題などを厳しく追及する予定だ。
政権基盤が不安定になっている中で、首相が得意とする論戦で答弁に窮するようなことがあれば、民主党代表選での再選に黄信号がともりかねず、緊張した場面が続くのは間違いない。
さらに、9月下旬にも召集される予定の臨時国会では、さまざまな法案審議が待ち構えているが、昨年までの自公政権と違い、与党は衆院で再可決が可能となる3分の2以上の議席を持っていない。野党が反対すれば予算以外の法案は通らない状況で、これが「すでに菅内閣は死に体」(民主党若手議員)とまで言われるゆえんだ。
こうした中、政権を救う唯一の希望と見られているのが蓮舫氏による「事業仕分け」だ。
10月には特別会計と国の全事業約5500を対象とする「事業仕分け第3弾」を行うことを決定。ここではさらに、第1弾・第2弾の結果が2011年度予算の概算要求に反映されているかどうかを検証する「再仕分け」も行う。蓮舫氏は28日、民主党の玄葉光一郎政調会長(46)と会談し、民主党議員の協力を要請した。
また、20日の記者会見では「20年以上続いている規制に必然性があるのか。オープンに議論する」と「規制仕分け」の年内実施も宣言した。
この「規制仕分け」は利害関係者である民間企業の参加も見込まれるため、より白熱する。国民から見ておもしろくなるのは確実だ。
しかし、特別会計も規制のどちらの仕分けにも、「法改正」という大きな壁が立ちはだかる。
国の特別会計も法律に基づき置かれているため、抜本的見直しには法改正をしなければならない。各府省が所管する計1万3556件の規制のうち、3分の2の約9000件が政省令だけでは廃止できず、撤廃には関連法の改正が必要だ。菅内閣として野党の協力を得なければ、仕分けは単なるパフォーマンスの骨折り損に終わってしまうのだ。
実際、危機感を募らせている蓮舫氏は第3弾については「これまでの事業仕分けとは趣が変わる。残念ながら予算に寄与するところはどうなのかな」と「金額はたいしたことない」との予防線を張る一方、野党にも仕分け人となるよう秋波を送っている。すでに、仕分けの生みの親でもある自民党の河野太郎幹事長代理(47)の名前も挙がっている。
ただ、民主党内には「自民党、特に河野氏を巻き込んで仕分けをするとなると主導権を握られるほか、民主党の政策にも文句をつけてくる危険性がある」(中堅)との警戒感も強く、見通しはたっていない。