要求を通すために咬む犬
咬む犬のご相談のなかでも、犬が自分の要求を通そうとして
飼い主を咬むケースは、比較的解決が早い。
そのような犬は、「咬むことの威力と効果」を十分理解したうえで、
咬むという行為に及んでいるので、飼い主が犬に咬まれるような
状況を一切避けることと、犬の要求には一切応じないこと、こちらの
要求に応じたときのみ良いことが起こる(食べ物を与える、愛情や
関心を与える)
といった、行動療法を行うことが解決の指針になる。
自制心が弱く、すぐに興奮する犬であれば、自制心を強化する
トレーニングも同時に行う。
運動不足、食餌量の不足、食餌内容の問題、人間のかまいすぎ、
といった犬の問題行動を誘発するような生活面の問題がないか
カウンセリング時にチェックすることによって、必要であれば
それらの改善についてもアドバイスしている。
要求を通すために咬むのか、恐怖による攻撃なのか、所有欲に
よる咬みつきなのか、過敏性によるものなのか、一口に咬むと
いってもさまざまな原因と、要因がからみあっている。
どちらにしても、「犬には絶対に咬まれてはいけない」
咬むことで犬の興奮が増大するし、攻撃が成功することで次の
攻撃を発生させるリスクが上がってしまう。この仕事をして6年に
なるが、攻撃的な犬に咬まれたことは、1度しかない。
それは、細心の注意を払って咬まれないようにしているからだ。
不用意な動作、無神経な接近、手荒い扱い、どれも厳禁である。
よく、「咬まれた時はどう対処したらいいのですか?」と
聞かれるが、対処なんてものはない。殴る、蹴る、押さえつける、
どれも、犬の攻撃を防ぐためにする以外には、何の効果もない。
咬まれたらどうするか?ではなく、咬まれないようにする
にはどうしたらよいのか?を考え、実行することが大事だ。
「咬んでいないときの生活を変える」ことが、結果的に
「咬まない犬にする」解決法なのである。