2009-10-24
3人拠っても出てこない文殊の知恵
意見や議論によって間違いを指摘されたり、指摘したりすることはよくあることです。そして大勢の人が情報を持ち寄り意見や議論を交わすことにより新たな付加価値を持つモノやサービスが生まれることはまれです。『3人拠れば文殊の知恵』、『集合知』という言葉は実現不可能な夢物語なのでしょうか。
立場が変われば意見が変わる。個人には必ず属性というものがつきまといます。序列、立場、環境、支援団体などさまざまなバックボーンを抱えて議論を行うのです。あちらをたてればこちらがたたず。利害は必ず一致するということにはなりません。特にゼロサムゲームのようなものに関しては顕著に表れます。
こういったバックボーンを背負った上での議論というのは利害関係を調整して落しどころを探らなければなりません。つまり、お互いを利するものでなければ労力は差し出さない、または出資比率に応じてリターンを考えるといった権力構造、経済的活動が伴っているからです。それはそれで当然のことです。立場がそうさせているのであって、本人がそれを望んでいることは基本的に異なると思います。
だから、3人寄っても文殊の知恵は出てこず、集合知が発揮されにくいのです。しかし、こういったバックボーンを伴わない集合知という形があります。参加者がよろこんで労働力を差し出して、それ以上の人が利益を享受する場合。
権力構造や経済的活動を伴わない『楽しい』知的活動です。
子供時代、何も無い野山で遊んだ経験がある人はご理解頂けると思います。何も無い野山では遊びをクリエイトしなければなりません。一人が遊びを提案すれば、こうやったらもっと面白くなるといった意見があちらこちらから出てくる。それを一度試してみる。問題やつまらないと思われる部分が出てきたら再度、意見を言い合って、より楽しい遊びに変えていくのです。これこそ、まさに集合知ではないでしょうか。
現在、ネット上でオープンソースという概念が出てきています。参加者は面白いモノや役に立つモノを作ろうと集まって楽しみながらワイワイやっています。ここに労働という概念はありません。こういったものは現在、世界中で新しい価値として認められ、全人類に対して有用な価値になっているものもあります。
集合知を実現するにはある程度の参加人数の規模が必要です。そして、それらの参加する人をつなぐプラットフォームが求められます。さらに参加するインセンティブが要求されます。加えて、情報を参加者だけで囲い込まずに、不特定多数に常に公開するという環境を維持し、新規参加者の獲得を図ってくという仕組みも必要です。
ネットはその特性上、こういった垣根を乗りこえやすい環境にあります。その他の分野でもプラットフォームを整える労力はかかりますが、様々な人との交流を通じで集合知が発揮できる分野は沢山あると思います。今後は、おばあちゃんの知恵袋を最新のテクノロジーに応用させたり、分野が異なる新しい技術や概念を、他分野に適応させて取り入れていくなど、まさにクラウドな展開をしていくことだと思います。
しかし、条件があります。様々な垣根を乗りこえて文殊の知恵がひねり出されるには、なによりもまず参加する人が『属性を持たない個人』として心を開くことです。
まずは排他的な自己保存意識を取り払い、協調的で新たな価値観を共有する幸せを知ることです。
参考文献
クラウドソーシング 世界の隠れた才能をあなたのビジネスに活かす方法
- 作者: バリーリバート,ジョンスペクター,野津智子
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