2009-10-13
いわゆる『経験者』は誰が作るのか 本当に見えるウソ
資本主義社会では『経験者』を高く評価します。コスト的にみても即戦力は費用対効果が高いから当然といえば当然です。一方、経験者でない人はどうなるのでしょうか。周囲から出遅れて数年間経験を積む機会を失われた人にチャンスが与えられないような社会は冷たすぎるとと思いませんか。ではどうすればいいのでしょうか。
『公共事業』の出番です。民間企業では解雇規制のため回収の見込みのある新卒の育成コストしか引き受けることができない状態になっています。新卒から漏れた人は年功序列システムでは救うことはできません。社会のルールでは弾かれた層をバックアップすることは公的部門のお仕事のはずですし、このような人を社会に適応させることは、社会全体のコストからみてもプラスです。
今までは失業対策に大量のバラマキと呼ばれても公共工事を沢山やってきました。しかし、これらの公共事業で雇用は確保できるものの、今後に日本の成長に繋がっていきません。これからは新卒に漏れた若者を、今後必要とされる仕事や日本全体の底上げにつながるような仕事に従事させるような機会を作るべきです。
以前、刑務所ビジネスでも書かせていただきましたが、米国の受刑者はPCのタイピング等を教えられ、釈放時には一定以上のスピードでできるようになっているそうです。データ入力業務等は、一定以上のスキルが必要で職業ニーズもそれなりにあります。雇用の受け皿を考えて公共事業が行われています。ニーズの無い木彫りの熊などをつくる技術や、賃金が安い裁縫技術などは公共事業の対象ではありません。
現在、日本の若年者雇用対策は“履歴書書き方指導”や“面接指導”が積極的に行われています。コミュニケーションは確かに組織に属する人の基本的なスキルですが、企業は履歴書の書き方や面接がうまい人を雇いたいと思っているわけではありません。履歴書を埋められる実務の経験や具体的な実績がある人を求めているのです。
ニーズの高いと思われる“公共事業”
「データ入力」公共団体等のデータ入力
「WEBデザイン、更新」Webサイト作成、更新
「集金業務」未納金の取り立て業務等
「テレマーケティング」電話での公共調査、統計
「コールセンター」苦情や相談の対応
「看護・介護支援」病院や老人ホームなどでの看護・介護補助
日本語が必要なスキルは日本人が相対的に優位にあるため比較的に需要の高い仕事とも言えます。このような業務は必要不可欠なので公共事業としては割の良い部類に入ると思います。リカードの法則にもあるとおり、生産性が高い人が生産性の高い仕事をするためには、生産性が低い仕事を誰かにやってもらう必要があるのです。
現在は、経験者を作るコストをなすりつけあっているため、ダラダラと必要以上に苦しむ人を増やす結果となっています。考え方を変えて経験を積ませるためのコストを社会全体で引き受ける方がトータルでみて安心な社会なのではないでしょうか。
参考文献
- 作者: 海老原嗣生
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2009/05/18
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