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第5部 すそ野を支える <8>
海外市場狙う資金源

外資系ファンド 技術力と相乗効果期待 (06/07/04)

最高顧問となり、執行役員からの相談を受ける田辺さん(左)(東京都港区のユーシン本社)

 マツダにドア関連などの電装部品を納入し、広島県海田町に主力工場を持つユーシン(東京)。六月中旬、二十八年ぶりに新社長が誕生した。社長だった田辺耕二さん(72)が最高顧問に退き、同業の電装部品メーカー、ナイルス(同)前社長の竹辺圭祐さん(58)がトップに就いた。

 ▽80億円の増資

 社長交代劇は周囲に驚きを持って迎えられた。米系投資会社RHJインターナショナル(旧リップルウッド・ホールディングス)が提案した八十億円の増資と、新社長に傘下企業ナイルスのトップを据える案を、ユーシンが受け入れたからだ。

 しかも、RHJは発行済み株式総数の20・1%を保有する筆頭株主になった。だが、田辺さんは「外資が筆頭株主となることに全く不安はない。世界的にビジネス展開する企業ではよくあること」と周囲の反応は意に介さない。

 ユーシンは田辺さんの父、故善吉さんが自動車部品の商社として東京で創業。戦後、電装部品の製造に乗り出し、主力の広島工場でマツダ向けの売り上げを伸ばした。

 マツダと米フォード・モーターの提携強化後、海外進出を加速させたマツダと歩調を合わせてタイや中国などに工場を建設。取引額の約二割を占めるマツダをはじめ、フォードや三菱自動車、米ゼネラル・モーターズなどとの取引も広がった。

 優れた技術力を誇る一方で、海外展開により約百六十億円の負債も抱えた。そこに資本参加の提案をしたのがRHJだった。話が持ち上がった昨年十月前後にはRHJのほか、海外の部品メーカーや国内の投資ファンドなど四社から、同様の話が寄せられたという。

 マツダの協力部品メーカーへの外資の出資・買収は初めてではない。一九九〇年代末以降、マツダが協力メーカーの保有株を売却。マツダが筆頭株主だった旧辰栄工業をドイツのコンティネンタル・テーベスが買収し、100%子会社マイクロテクノのピストン部門をドイツのコルベンシュミットが買い取るなど、欧州の部品メーカーの子会社が東広島市などでいくつか誕生した。

 ▽成長チャンス

 しかし今回は外資系ファンドによる増資であり、マツダの主要協力メーカーでは初のケース。しかも旧リップルウッド・ホールディングスは、日本長期信用銀行(現新生銀行)などの買収でも知られている。

 田辺さんはRHJに株式を長期保有してもらうため、株の売買前には報告することなど百項目以上の契約を結んだ。そこまでして外資系ファンドを受け入れたのは「さらなるグローバル化が必要」と考えたからだ。

 増資した八十億円のうち、約五十億円を設備投資に投じる。オートエアコンなどを製造する広島工場、マニュアルエアコンなど生産のタイ工場をともに増強。「国内を高精度部品に特化し、海外を低コスト生産の拠点として明確に役割分担する」戦略を描く。

 中国やインド、東南アジアの自動車市場は今後、急拡大するのは確実だ。「今、対応できるか否かが将来の部品メーカーの成長を決定づける」と田辺さん。チャンスを生かすため資金が必要だったユーシンと、優れた技術力を生かして傘下企業とのシナジー(相乗)効果を狙うRHJの狙いが一致した。

 自動車メーカーは今、グローバルな再編の渦中にある。その下で部品メーカーにも、国境を越えた資本の波が押し寄せている。=第五部おわり(山瀬隆弘)

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 ユーシン 本社は東京都港区。1926年に有信商会として創業。57年に広島出張所を開設し、63年に広島県海田町に広島工場を完成させた。日本のほか中国、タイ、北米など海外5カ国に工場があり、ドア関連やキーセットなどの電装部品を製造する。従業員約4000人。

 第五部は寿山晴彦と山瀬が担当しました。第六部は今月下旬に掲載します。


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