【コラム】サムスンとアップルに納品してみたら…(上)

 数年前のことだ。電子関連のベンチャー企業を経営するA氏がある日、米国のカジュアルブランド「GAP」のTシャツを色別に3枚購入した。韓国の大企業は、A氏が経営するような中小企業に納品単価を下げさせ、サンプルを作らせておきながら代金を支払わないといった横暴を日常的に行っており、A氏も普段からこれに悩んでいた。A氏は「わたしも休日には、せめて服くらいは甲(一番良いもの、韓国語の発音は「カプ」でギャップに似ている)を好きなように買って着てみたい」と話す。中小企業の事情をよく知っているという現政権が発足しても、A氏が泣きながら乙(泣く=韓国語でウルダ、ウルは乙の韓国語読みでもある)を選ぶ苦しみは変わらない。

 簡易投稿サイト「ツイッター」では最近、米アップル社とサムスン電子に納品している中小企業社員のブログが話題となっている。アップルは6カ月単位で購入予定の数量をあらかじめ下請けに連絡し、設備投資が必要な場合には、その費用を考慮して合理的に単価を引き上げることも認めるという。この社員は、「韓国の大手企業と取り引きをしてみたら、天国から地獄に落とされたような気分だった」「携帯電話が突然鳴り響くと、心の中には“放っておけ”という思いがいつもわいてくる。そのような思いのためか、ある日突然、数億ウォン(1億ウォン=約730万円)分の在庫を残し、18カ月の地獄体験は終わった」と打ち明けた。

 大企業の横暴と中小企業の悔しさは、単なる話題の種で終わらせるような問題ではない。韓国経済の競争力を根本から引きずり下ろし、未来を遮る問題の本質がここにあるからだ。衰えてきている企業に代わって新たな企業が誕生し、その役割を埋め合わせる、健全な産業生態系に関連する問題だ。巨大化し、官僚化した大企業は、果敢な投資や冒険をしにくくなる傾向が出てくる。そのため新たな市場を切り開く「破壊的な革新」は、新生中小企業から起こってくるものだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る