設立趣意書

日本の麻雀界が問われています。

私達は、麻雀を愛する仲間として永年の憂いから開放される事を望んでいます。
「日本麻雀伝承百年」を間近に迎えようとしている今日、再び麻雀界が活性することを希求します。
今ここに、その実現に向け、溢れんばかりの情熱をもって新組織の建設を広く愛好家に訴えたいと思います。

麻雀は、世にあまたあるゲームのひとつ、と見ている人も多いはずです。しかし現実には、麻雀は世界的規模で親しまれ、華麗な歴史に彩られています。
中国を発祥とする麻雀は、その歴史をたどると唐の時代に作られた〈葉子戯〉というカルタ遊びにその原型を見ることができます。現在の形〈清麻雀〉の体をなすようになったのは清王朝の末期、欧米の列強が相次いで中国大陸に進出した頃です。当時、上海租界を中心に、欧米人の間でたいへんな麻雀ブームが出現しました。そして彼等の手によって、“中国の麻雀”から“世界の麻雀”へと国際的なゲームに変貌を遂げ、欧米諸国に広まっていったのです。

我が国で初めて麻雀に興味を示した人物と言えば、文豪・夏目漱石の名が挙げられます。1909年(明治42年)の「満韓ところどころ」で漱石は、大連でみた麻雀の模様をつぶさに記しています。この作品が上辞された年、1909年(明治42年)が、我が国における〈麻雀元年〉と呼ぶにふさわしい年なのです。
漱石によって初めて我が国に紹介された麻雀は、翌1910年(明治43年)、現在のサハリンで中学の教頭をしていた名川彦作氏が麻雀牌を持って帰国したことにより、ついに具体的なものになっていきました。
そして、麻雀は激動の昭和史に2度のブームを巻き起こすことになるのです。

1929 年(昭和4年)日本麻雀連盟が設立され、その初代総裁に作家・菊池寛が就任し麻雀の普及に邁進します。さらに麻雀亡国論が叫ばれはじめた1934年(昭和 9年)、久米正雄、広津和郎、東郷青児といった当時の一流文化人が麻雀賭博によって逮捕されるに至り、一般大衆の麻雀に対する関心は一気に高まりました。この時代が、第一期麻雀ブームと言われるものです。

第二期麻雀ブームは、この時代から遅れること30年余り、作家五味康祐が昭和43年「暗い金曜日の麻雀」を、阿佐田哲也が昭和45年「麻雀放浪記」を発表し麻雀小説の金字塔を打ち立てた時代に到来しました。
テレビでは大橋巨泉の「イレブンPM・麻雀実戦教室」が茶の間の話題をさらいました。そして町の麻雀荘も増加の一途をたどり、1978年(昭和53年)には、全国で36,173軒に達したのです。まさにここが第二期麻雀ブームのピークであり、麻雀の黄金期と言える時代でした。
ところがその麻雀荘の数も平成に入ると減少しつづけ、現在では黄金期の三分の一以下、12,000軒ほどになっています。
競技・ゲームとしての麻雀の社会的向上を

ブームが去った原因としては、第一に、戦後日本の目覚しい経済復興により国民の生活に時間的・経済的余裕が生じ、余暇の楽しみ方が豊富になったこと。第二に、レジャー産業の発展と共に多種多様なギャンブルが隆盛してきたことが挙げられます。この様な情勢を迎えている中で麻雀界が衰退しているのだと考えられます。

第一・第二期のブームは、何だったのでしょう?
それは、現代では想像もつかない戦後の経済的、社会的混乱の中でのブームであり、残念ながらギャンブル性を前面に押し出してのものと云わざるを得ないのです。その為に今日に於いても麻雀=ギャンブルとして一般的にとらえられているのです。
今日、麻雀界が衰退している主たる原因は、ここにあるのではないでしょうか。私たちは今こそこの負の歴史を精算しなければならない時だと考えます。

では、麻雀界は、厳冬期に入ってしまったのでしょうか?
実はそうではありません。その証拠に政府のレジャー白書でも実数としては1,500万人余りの愛好者がいると伝えています。
ただし、4人ひと組が麻雀荘で興じるという形態から、現在はインターネット対戦麻雀やアーケード麻雀ゲームの利用、麻雀教室や健康麻雀サロン等、麻雀の楽しみ方が多様化された時代に突入しています。
医学界においても臨床医学やリハビリの見地から麻雀の効用が唱えられるようになり、核家族化してしまった家族のコミュニケーションツールとしても見直されています。さらには、団塊の世代の退職期に入り、シルバー人口の増大にともなう余暇活動の側面からも、麻雀の第三期ブーム到来はごく現実的に予感されるものなのです。

以上のことから、麻雀はこれまでのギャンブル性の強いものから、社会性・公共性を持った競技・ゲームとしての時代に突入したと捉えることができます。私たちは、この〈社会性・公共性を持った競技・ゲームとしての麻雀〉を基本的な意義として位置付けします。
ところが、これだけの社会的広がり、意義を持つ麻雀でありながら〈公〉の形でこれらを包括する愛好者の組織が日本には存在していません。
囲碁・将棋界を例に挙げるまでもなく〈公〉の法人格を取得するためには、アマ・プロの共存した組織体を創出する必要があるのではないでしょうか。

麻雀界の社会的地位の向上と併せて公共の福祉と安寧に寄与するという目的をも包含しつつ、ここに【日本麻雀機構】を設立することにしました。

私たちは、かつて麻雀に押し付けられていた暗いイメージを払拭し、再び麻雀界を活性化させることを念頭に活動してまいります。そして世代・地域を越え、愛好者を掘り起こし、来る2008年に〈日本麻雀伝来百年祭〉を挙行し、新たな真の麻雀ブームを到来させる所存であります。

2006年7月吉日
日本麻雀機構設立準備会