2010年7月30日0時9分
先進国の1〜3月期のGDPを引き上げたのは輸出である。我が国では輸出が経済回復を先導し内需も喚起している。欧州では輸出によってかろうじてプラス成長を維持し、米国では輸出の伸びが景気を支える要因の一つとなり、5年間に輸出を倍増させる計画が動き出した。これらの輸出を支えるのが、中国、インド、ブラジル、ロシア、ASEAN諸国などの新興国の内需を中心とした経済発展である。
しかし、急回復していた我が国の輸出に変調が表れている。輸出の伸び率は2月の前年比45.3%増をピークに鈍化し、6月には27.7%増に低下した。要因は、前年2月の落ち込み幅が大きかったことがあるが、北米や欧州向けが大幅に減少してきたこと、また極めて高い伸び率を示していた中国、韓国、台湾、ASEAN向けにも陰りが見られることである。業種では高水準にあった自動車及び同部品の伸びが急激に鈍化し、また、化学製品、半導体なども伸び率を低下させてきた。これは、世界的に内需や生産の伸びが落ちてきたことを示している。
もう一つの大きな要因は、日本国内での生産・輸出というパターンから、現地生産・現地供給、中国生産・対日輸出という流れが強まってきたことである。前者は自動車及び同部品、オートバイ、エアコンなどであり、後者はパソコン、薄型テレビ、携帯電話、半導体などである。
こういった傾向が続く限り、我が国の輸出は2年前の水準にはなかなか戻らないであろう。我が国経済が持続的な回復を続けるためには、新たなイノベーションに基づく製品・システムの輸出や海外投資収益の拡大を図ることがますます重要になってきた。(創)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。