2009-07-06
官僚たちの夏の政治システム
日本が急激な経済発展を遂げ、貧しい敗戦国から一気に世界と肩を並べる経済大国へと変貌する時期に通産省は成長を続ける日本市場を狙う外資から、まだまだ貧弱な国内産業を庇護しそれと戦えるまで育成せねばならないという使命感に燃えていました。市場経済をある意味で否定する彼らの知的傲慢さに、嫌悪感をもたれた人も多いかと思います。
許認可権や政府系金融を駆使し、官僚主導で日本の産業を理想の形につくりかえていこうと主人公は奔走します。そのためには彼らは『無定量・無際限』に働くことを厭いませんでした。しかし、時代は移り変わり日本経済は自立し始めます。方向性を見失い、官僚達は自らの利権を増やすことに邁進し始めます。産業政策への官僚たちの情熱と効果への期待は、バブル崩壊まで続きます。その後はご存知の通りです。
サブプライム危機以降の経済状況で、緊急の財政出動が行われています。グリーン・ニューディールのように官僚主導が復権しつつあります。小泉政権時に小さい政府の名の下に息の根を止められそうになった官僚達が息を吹き返す格好となっています。
最近の日本経済の打たれ弱さは、輸出に頼り切る産業構造を改革しなかったことに主因があると言われています。民間が金融危機により制御不能に陥ってしまった今となっては再び、官の指導と保護によって育成する時代に突入するという可能性が出てきたということです。
歴史は繰り返します。しかし今の時代、日本こうあるべしという理想のもとに身を賭して働く者が何人いるでしょうか。官僚も、政局しかみていない政治家にこき使われ、マスコミからは不毛なバッシングを受け、国家の為に働くという気概を失ってしまっているのではないでしょうか。
『官僚たちの夏』に描かれている人たちは、自身の金、名誉ではなく、国家のために自己を滅し仕事することに生きがいと天命を感じ人生をつぎ込んだ男たちが、悲哀とともに描かれています。少し思い込みが激しく危うい部分は確かに否定できませんが、もはやお目にかかれない熱いダンディズムです。
現在、「官僚主導型の政治システム」が疲弊しているのは事実です。しかし、当時、崇高な気概を胸に国家のために働いた彼らの存在を、我々は忘れるべきではありません。 本気で日本のことを考える日本人しか、日本の官僚にはなってはなりません。彼らに国家を意識して働いてもらうことでしか、日本の体制は変わらないからです。
今回の選挙は官僚と政治との関係の在り方は重要な争点になります。利権に執着する餓鬼に大きな顔で居座られて崩壊するのは餓鬼自身を含む世界そのものです。現在の豊かさは過去の人が築いたものです。食いつぶすのも、遺産を未来に引き継ぐのも我々の世代の責任に変わりはありません。
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