埼玉県飯能市の山中、正丸峠(しょうまるとうげ)に、約100匹の動物の死骸が捨てられていたショッキングな事件。埼玉県警はペット葬儀関係者による不法投棄とみて捜査を進めていたが、このほど動物葬祭業を営む71歳の男を逮捕。廃棄物処理法違反でさいたま地検に送検するとともに、"遺族"に別の動物の骨を渡して騙したとして、詐欺容疑の適用も視野に入れているという。
ちなみに、現場は立つこともままならない急峻な斜面。3月26日に行なわれた死骸の回収作業には、あまりに危険なために県警機動隊からレンジャー部隊が派遣されている。2回に分けて回収された遺骸は、1立方メートルの袋3つ分。重さにして約650kgに達したという。
はたして今回のような例は氷山の一角なのだろうか。都内でペットセレモニー全般を取り扱っている大手葬儀業者は、「正直いって3、4年くらい前まで噂は聞いていた。最近はあまり聞かなくなったけど......」と口を濁す。今回の事件をきっかけに、全国各地で類似案件が発覚する可能性もありそうだ。
ところで、公の場に死んでいる動物の遺骸はどのような決まりで処理されているのだろうか。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、廃掃法)によれば、第二条第一項で「動物の死体は廃棄物である」と定義され、普通のゴミとして扱われている。
さらに廃掃法第十六条第二項では、「何人も廃棄物を焼却してはならないと」とされているため、飼い主は自分のペットが死んでも勝手に火葬をすることができない。もっとも、現在の社会事情の中で死んだペットを庭で燃やすという行為も考えにくいが、法文を厳格にとらえればペット葬儀業者へ委託して燃やすのも違法と受けとれないこともない。
これについて厚生労働省では、「動物霊園事業として動物の死体を引き取ったり、火葬して墓地埋葬したりする場合は、ご家族の感情に配慮して廃棄物に該当しないという見解を出しています」とのこと。つまり、ペット葬儀業者が霊園事業として焼却する場合なら燃やしてもOKというわけだ。
では、そうした法に基づいて実務にあたっている行政は、実際にどんな形で動物の遺骸を処理しているのだろうか。東京都江東区では、「動物の遺体回収専門会社というのがあり、そのうち2社と契約しています。引き取り手数料は1頭あたり約1万2,000円。業者を通して関東近県の墓地に移送され、無縁仏として埋葬されます」。…