岐阜の寺で説法をしている。誰にも会いたくないと言っている――。111歳で都内の男性最高齢とされた東京都足立区の加藤宗現さんが、死後約30年経過したとみられる白骨化遺体で見つかった。区は何度も自宅を訪れたが、家族が拒み、会うことはできなかった。区は「強制的に立ち入る権限はなく、存命の確認が困難だった」と力無く話した。
「まさか自宅に死体があるとは思わなかった」。区戸籍住民課の初鹿野学課長は、何度も訪れた玄関先の奥で加藤さんが亡くなっていた事実を知り、驚きの言葉がついた。
区によると、加藤さんの安否について初めて連絡があったのが1月27日。近所の女性民生委員から「最高齢者の加藤さんをしばらく見ていない。確認できないか」と連絡があった。
2月上旬、区は対応会議を開き、職員が自宅を訪問したところ、「家で寝ている」「会いたくないと言っている」などと玄関先で家族が話し、面会できなかった。加藤さん宅には長女夫婦と2人の孫の計4人が同居していた。
「弟がいる岐阜の正道寺で説法をしている」と説明されたこともあったが、その寺に加藤さんはいなかった。「広報誌に紹介したい」と写真の提供を申し込んでも、断られた。「一目だけでいいから、会わせてもらえませんか」。職員がこう説得してもかなわず、最後は警察の捜査に委ねるしかなかった。
区によると、加藤さんは2007年4月以降、区内最高齢だった。死亡届が出されなければ「生存」扱いとなり、敬老の日近くになると、「長寿者」として毎年、都に報告していた。
区によると、70歳以上を対象にした「生きがい奨励金」として90年以降、11万6千円分の現金や商品券が支給されたとみられる。90年に申請書が出ていた。