家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」で打撃を受けた地域経済の立て直しに取り掛かる宮崎県は、口蹄疫対策特別措置法に盛り込まれた「地域再生基金」を頼りにするが、国側の制度設計は全く進んでいないのが実情だ。東国原英夫知事は「県が大枠を示さないと、国は重い腰を上げない」として、国に示す具体的な計画づくりを急いでいる。
同基金について、県側は「特措法制定に当たり、県が要望した項目ではなかったので、むしろ国が積極支援するという意思表示だと思った」(財政課)と期待。阪神・淡路大震災復興基金のような、ハード面の被害回復から生活支援まで幅広く対処できる基金をイメージしていたという。
特措法施行に要する経費は約1千億円と見込まれており、知事は「これまでに使った対策費は800億円程度。約200億円は残っているはずだ」と、農林水産省などに早期の基金設置を求めてきた。だが、27日に開かれた政府の対策本部会議では「具体的な話はなかった」(山田正彦農相)。口蹄疫対策室も「県が何を望んでいるのか分からず、要望を待っている」(内閣官房)という。
県は「自然災害の場合と違い、経済や産業の復興といったソフト対策が主体なので、自由度の高い財源が不可欠」として単独でも基金を創設したい考えだが、財政調整基金の残高は49億円。新たな基金に積めるのは10億-20億円程度の見込み。「基金の規模次第で復興の速度にも大きな差が出てくる」と懸念する。
知事は8月27日に予定する「終息宣言」に合わせて基金の概要を示したい意向だが、国との温度差は歴然。対立の火種となる懸念もある。
=2010/07/29付 西日本新聞朝刊=