民主両院総会:党内対立鮮明に 小沢グループ激怒

2010年7月29日 22時2分 更新:7月29日 23時29分

 責任論をいったん棚上げし、9月代表選で再選を狙う菅直人首相。責任論を追及しつつ、「菅降ろし」を図る小沢一郎前幹事長支持派--。29日の民主党両院議員総会での白熱した議論は、民主党内の「執行部VS小沢グループ」の対立構図を鮮明にさせ、「9月決戦」に向けて火ぶたを切った権力闘争の実像を強く印象付けた。【須藤孝、竹島一登】

 「昨年の政権交代の原動力となった、民主党の原点とも言える『国民の生活が第一』の政治にまい進する」

 菅首相は両院議員総会の冒頭、「責任」と「おわび」に3回ずつ触れる一方、「決意」として語ったのは、参院選で自身が訴えた「元気な日本を復活させる」ではなく、小沢氏が代表時代に掲げたスローガンだった。

 菅首相は参院選で、小沢氏の代表時代に封印した消費税論議をいきなり焦点に持ち出して敗北し、これに小沢氏は不満を隠さなかった。公約見直しに批判が集まることを予想した執行部は、枝野幸男幹事長が「消費税発言や参院選公約の内容が(昨年の公約の)基本から外れたものと受け止められた」と陳謝し、理解を求めた。

 これに対し「誰も相談されていない。いつから民主党は北朝鮮になったのか」(小泉俊明衆院議員)、「多くの有権者が公約変更と判断したことが、消費税発言への反感につながった」(福島伸享衆院議員)と批判が噴出。枝野氏は釈明に追われた。

 実際には、参院選に向けた公約の見直し作業が始まったのは鳩山政権下の3月末。それでも、首相の消費税発言に対し「政権を取れば財政や消費税に触れないのは無責任だ」(山井和則厚生労働政務官)とする擁護論は少なく、菅体制で党中枢から排除された小沢グループの怒りの声にかき消された。

 ひとまず批判の嵐に耐えた首相だが、子ども手当や高速道路無料化など、巨額の財源が必要な衆院選公約に引き戻された対価は小さくない。首相は「公約をできる限り追求したい」と発言したが、高速道路料金で政府と対立した川内博史衆院議員は「結局あきらめていると思わざるを得ない」と反発した。

 菅首相にとって8月末の11年度予算概算要求が正念場となる。政府が閣議決定した「一律10%削減」の概算要求基準に対しても「まだまだ(特別会計などの)埋蔵金は出せる。その検討もせず消費税論議が出ることが官僚主導だ」(福田昭夫衆院議員)とけん制する意見も出た。

 仮に代表選を切り抜けても、参院で少数に転じた「ねじれ国会」では、野党の協力がなければ法案は通らない。党内と国会で、綱渡りの政権運営となるのは確実だ。

 ◇代表選本格化、対抗馬に4氏浮上

 民主党両院議員総会で菅首相が9月の党代表選出馬を表明したことで代表選に向けた動きが本格化する。党内では複数候補による本格的な代表選実施を望む声が強く、小沢前幹事長による対抗馬擁立の動きが焦点だ。

 「改革しようと思えば、相当の覚悟と決意を持って政権運営にあたることが必要だ」

 小沢氏は29日、側近の高嶋良充前参院幹事長にこう強調し、菅首相では改革はできない、との思いをにじませた。高嶋氏は「それをできる人がいますか」と水を向けたが、小沢氏は表情一つ変えなかったという。高嶋氏の意中の人は、ほかならぬ小沢氏だった。自身の出馬について小沢氏は一切語っていないが、周辺には否定的な見方が強い。

 菅首相の対抗馬として名前が取りざたされているのは、6月の代表選で善戦した樽床伸二国対委員長に加え、このときの代表選で候補に名前があがった原口一博総務相、海江田万里衆院財務金融委員長らだ。

 いずれも小沢氏を支持するグループが擁立を検討した。樽床氏を擁立した中心メンバーの松本剛明衆院議運委員長も浮上している。4氏は小沢グループではないが、「革命的改革」を唱える小沢氏に近い存在で知られる。

 関係者によると、小沢氏が狙うのは78年の自民党総裁選予備選の再現とされる。初の党員参加で実施され、小沢氏が所属した旧田中派が支援した大平正芳幹事長が、現職総裁の福田赳夫首相を引きずり降ろした政変劇だ。ロッキード事件で訴追された田中角栄元首相は他派閥から首相候補を擁立して求心力を保った。

 小沢氏は政治資金規正法違反事件を巡る検察審査会の結論次第で強制起訴になる可能性があり、行方が重くのしかかる。4氏も出馬については「複数の候補が議論を交わすことが大事」(原口氏)などと述べるにとどめ、明言を避けている。出馬しても「小沢氏のかいらい」というレッテルが張られるとの懸念もある。一方、鳩山由紀夫前首相や岡田克也外相は菅首相支持を表明しており、「決戦の9月」に向け攻防が激化するのは必至だ。

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