《―――それでは皆様、よいお年を〜〜〜》
・・・・・・今年は白組が勝ったか、相変わらず小林さんは衣装が派手だったな。
本日、12月31日。日本人には説明不要の大晦日。
歌合戦の勝敗と云う割とどうでもいい情報を手に入れた俺は今、茶を啜り、ゆく年くる年を観ながら炬燵に足を突っ込み暖を取っている。
現在地はもちろん俺の部屋、炬燵はこの冬に例の電気屋で買ったモノだ。オプションのミカンは欠かせないぜ。
・・・え、もう冬なのかって?時が経つのは早いんだよ、「光陰矢のごとし」っていうだろ?
2学期もいつもどおりの毎日だったなぁ。
朝学校行って、
夜侵入者をシバいて、
休みにコノセツと買い物行って、
図書館を彷徨って、
ノドカにビビられて、
魑魅魍魎をぶっ飛ばして、
エヴァさんの家でお茶会して、
男友達と遊び行って、
クーの相手して、
体育祭で盛り上がって、
カエデと模擬戦して、
テスト勉強して、
それから・・・・・・・
・・・・列挙してみたらスゲエ充実してんな、俺の生活。恵まれた環境だよ、ココは。楽しい一年だったなぁ・・・・。
そんな感慨を胸に、俺はヘロヘロの身体に喝を入れ、来年も楽しく生きようと決意するのだった。
・・・なんでヘロヘロなのかって?
・・・・・・行ってきたからだよ。聖地に、戦場の有明に。部下2人も一緒に。
ハルナに、「修羅場なのよ〜人手が足りないのよ〜」としつこく懇願され、やむなく原稿のベタ塗りやらトーン貼りやらをやらされたまではいい。
だがヤツはそれだけに飽き足らず、この3日間売り子だの何だので俺たちを祭にフル出場させやがったんだよ。
終いにゃ「手分けしてお目当てのモノを手に入れろ」とか言って、俺を買い出しに使おうとする始末だ。
マイノリティーへの優しさに定評のある俺でもさすがに断った、ややキレ気味に。
理解はあるが許容範囲を超えてるんだよ。男に買いに行かせるモンじゃねえだろ、オマエのお目当ては。
その様子を見た売り子嬢ノドカ&ユエは、同情の眼差しを俺に向けていた。ノドカも今回ばかりは俺に共感してくれたようだ。
コノカも顔を赤らめながらも売り子に勤しんでいた、真面目さんだねぇ。
セツナなんか終始顔が真っ赤、紅蓮・la・顔だったよ。コイツには刺激が強すぎたか。
ハルナんトコは、ココじゃ割と人気サークルらしく、かなりの部数だったにもかかわらず残らず売りきった。
しばし自由時間を貰ったので、3人でうろつくことに。女2人連れてコミケなんて、周りの野郎共に包丁で刺されそうなシチュエーションだな・・・。
せっかくなので何冊か買うことにした。・・・エロじゃねえぞ?全部ギャグ物だ。
結構デカくてカゲキなポップ作ってるところも多く、コノセツは顔面紅葉娘と化していた。
俺をとがめるような、「エロスはホドホドに」と言わんばかりの視線を向けたりしてたなぁ。エロ系は買ってねえっての。
途中、見たことあるようなメガネが居たような気がしたが、気のせいだろう。
そんな感じに歩き回っただけで、体力を根こそぎ持って行かれた。人多すぎるぞ、油断するともう二度と会えなくなりそうだ。
「どしたのミサト君?テンション低いよ?」
「・・・テメェがさんざん扱き使いやがったからだよ、触角メガネがっ」
「触角メガネ!?ヒドくない!?」
「酷くない、もう二度と手伝わねえからな」
「そんなこと言わないでよォ、売り上げの一部は献上するからさっ」
「困ったことがあったらいつでも言えよ?俺たちは図書館部の仲間なんだからな」
「切り替え早っっ!!」
―――――そんなこんなで無事帰還したので、ゆったりたっぷりのんびりとヌクヌクしているという訳だ。ハルナ、ノドカ、ユエはそのまま実家に帰ったようだ。
やっぱ大晦日は、こうして紅白観ながらのんべんだらりと過ごすのが一番だよ・・・・・
「私はK-1が観たかたアル」
「良いではござらぬか、これも日本の伝統でござるよ」
「あ、ミサト、そこのミカン取って」
「おそばできたえ〜」
「あ、手伝いますこのちゃん」
・・・・なんで居るんだよオマエら。
――――帰って来てから俺はずっと部屋でだらだらしていたのだが、しばらくして俺の部屋のチャイムを鳴らすモノが現れた。
誰かと思って扉を開ければ、そこに居たのはウチの構成員+バカレンジャー3人。
聴けばクーとカエデは同室の奴が実家に帰ったとかで暇してたらしい。なのでコノカの部屋に行ったところ、
「せっかくやから、みんなで年越そ♪」
という一言で俺んトコに来たらしい。
・・・・いつから俺の部屋はコイツらの集会場になったんだろうか?
確かにこの部屋は他の部屋より広いんだけどさ。なんで1人部屋なのにこんなにスペースがあるんだろうか。学園長の配慮か?何に対しての配慮なんだコレは。
結果、男1人に対して女5人。これだけ聴けばミラクルハーレム状態だ、ウレシクないと言えばウソになる。
・・・でもなぜだろう、嬉しさより哀しさが勝ってしまっているよ。
コノセツはわかるよ、でもオマエら3人はなんなんだ。男の部屋に居るという意識はないのかオドレらは。
「アンタじゃ渋さが足りないわよ。わ、私には、高畑先生がいるし・・・・」
「拳を交えた者同士、言葉は不要アル!」
「右に同じでござる」
・・・・なんとも嬉しいお言葉を頂いた。
くそぅ、寝込みを襲ってやろうかしら?
「襲ったらあかんえ?」
「当然だよ、英国紳士としてはね」
「アンタ思いっきり日本人じゃない」
無粋なツッコミはよしとくれ。
まあ、コノカ特製の年越しそばも食えるからいいか。
「おそば、ちゃんと数足りとる?」
「『数』と言えばこんなナゾを知っているかい?」
「まだそのネタ引っ張ってんの?」
「3以上の自然数nに対して、 (xのn乗)+(yのn乗)=(zのn乗) を満たす0以外の自然数x,y,zは存在しないという・・・」
「「「「????」」」」
「そんな数学界のナゾを突き付けられても困るわ」
「アイドル評論家ってどうやって生計を立ててるんだろうな?」
「ソレはただの疑問や」
「自然数」という単語が出てきた辺りから、レンジャー+予備軍が煙をあげてしまった。もう少し頑張りましょう。
みんなしてズルズルそばを食っていると、ふと疑問が。
「そういやマナは?」
「実家に帰りましたよ、神社の手伝いをするとかで」
ああ、近くの神社の娘だったなアイツ。この時期は何かと忙しい商売だからなぁ。
・・・年が明けたら初詣がてらヒヤカシに行くか。
そうこうしているうちに・・・
ゴーーンゴーーンゴーーン
《―――皆様、新年明けましておめでとうございます》
「「「「「「あけましておめでとうございます」」」」」」
全員、姿勢を正して一礼、新年のスタートだ。
今年もよろしくな、コノカ、セツナ、その他。
「「「その他!?」」」
ナイス初ツッコミ。
―――――がやがやがやがや―――――
やってきました龍宮神社。いやぁ人いっぱいだねえ、考えることは皆同じか。
神社行くけどどうする、と訊いたら全員ついて来た。暇なんだなオマエら。
「おや、来たのかオマエ達」
巫女装束のマナを発見、あけおめ。
「新年早々実家の手伝いとは、アッパレでござるな」
「なに、大したことじゃないさ。バイト代も出るしな」
ああ、そゆことなのね。
「折角来たんだ、ウチの神社に貢献していくといい。このお守りなんてどうだ、1つ500円」
「・・・参拝客にせびる巫女が何処に居る」
「ココに居るじゃないか」
コノヤロウ・・・・・。
「屋台が出てるアル!」
「タイヤキのイイ匂いがするでござるな」
食い意地張った発言をかます奴が2人。さっきそば喰ったばっかじゃねか、太るぞ。
「屋台は別腹アルよ」
「ニンニン♪」
そういって屋台へ駆け寄るジャンキーズ。まあ太りはしないか、年中動きまくってるし。
・・・・ん?ションボリしながら帰って来たぞ?
「サイフを忘れたアル・・・」
「ニン・・・」
バカだろ、わかってたけどオマエらやっぱりバカだろ。
「「・・・・・」」
・・・そんなモノ欲しそうな目で見るんじゃない。
「「「・・・・・・」」」
・・・なんで1人増えてんだよ、オマエも忘れたのかオジコン娘。
「「「「「・・・・・・・」」」」」
「・・・・・・わかったよ、1人1個な」
ヤッホーイと屋台に群がる女ども。・・・まあ、臨時収入もあったから良しとするか、うん。
「小倉1個アル!」
「拙者も小倉で」
「私カスタードね」
「ウチは抹茶で」
「白餡でお願いします」
「私も小倉だ」
「なんで巫女まで頼んでんだよ」
くっ、まあいい。すんませーん、チョコレート1個くださーい。
―――――さて、いよいよ参拝だ。45円入れて、ガラガラ振って、2礼2拍手1礼っと・・・
――――――――今年もコイツらと楽しく過ごせますように――――――――
「おみくじ引いていくアル!」
俺の金で、な。少しは遠慮しろよ。あとクジって聴くと微妙な気持ちになるんだけど、どうすればいい?
「知らないわよ、おみくじにトラウマでもあんの?」
あるっちゃある、どデカイのが1個。
「そんな些細なことより、早く引いていけ。1回100円だ」
また出費か、まあ正月だし大目に見ようか・・・。
シャカシャカ振って、棒出して、同じ番号の引き出しから紙を貰う。
さて、今年の運勢やいかに?
「大吉アル!」
「ほお、末吉でござるか」
「半吉?初めて見たわね、こんなの」
「ウチは中吉や、せっちゃんは?」
「私は小吉です」
「ふむ、吉か。ボチボチだな」
「だからなんで巫女まで引いてんだよっての」
「総統は?」
「・・小吉だな」
運勢は・・・・・
[ 金運:やや右下がり。思わぬ出費に注意すること ]
・・・・・もう遅えよ。
「金運上昇にも効果のある破魔矢はどうだ?1本5000円だ」
「それが原因だよ」
「ミサト、お年玉は無いアルか?」
いい加減にしろよバカイエロー。
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まだまだいくよーーーー
追記 : 45円→しじゅうごえん→始終御縁→ずっと御縁がありますように
という意味です