2010年5月31日 19時17分 更新:5月31日 20時56分
【ブリュッセル福島良典】オーストラリア政府は31日、南極海における日本の調査捕鯨の廃止を求め、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。これにより、調査捕鯨を巡る豪州と日本の対立は国際法廷の場に持ち込まれた。捕獲枠削減などを話し合う6月下旬の国際捕鯨委員会(IWC)総会の議論にも影響を与えそうだ。
在オランダ日本大使館に対し、ICJ事務局から31日、提訴の連絡が入った。日本が第三国からICJに訴えられるのは初めて。
調査捕鯨について日本政府は、研究目的の捕鯨を認めている国際捕鯨取締条約に基づいて実施されているとの立場だ。これに対して豪州政府は事実上の商業捕鯨にあたるとしている。
今後、まず、豪州が自国の主張を説明する申述書を提出。日本は申述書の内容を検討した上で、裁判に応じるか、「ICJには管轄権がない」などとして「入り口論」で争うかの判断を3カ月以内に下す。豪州が今冬の捕鯨中止を求めてICJに仮処分を申請する可能性もある。
豪州は当初、6月21~25日にモロッコで開かれるIWC年次総会での議論を見極めた上で提訴に踏み切る構えを示していたが、前倒しした。ニュージーランド政府は今後、数週間以内にICJに同様の提訴をするかどうかを決めると説明している。
IWC総会に向けて、南極海における日本の捕獲枠を削減する一方で日本沿岸での捕鯨を容認する議長案が提示されているが、豪州とニュージーランドは「議長案ではクジラの保護には不十分」などと不満を表明している。
◇総会での合意「更に困難に」
提訴について、水産庁遠洋課と外務省漁業室は「事実関係を確認しておらず、現時点ではコメントできない。対応は訴状を受け取ってから検討する」などと話している。一方、水産庁幹部は豪州がIWC総会前に提訴に踏み切ることで「総会での合意は更に厳しくなる」との認識を示した。