沖縄のアメリカ軍普天間基地の周辺の住民が、軍用機による騒音の被害を訴えた裁判で、2審の福岡高等裁判所那覇支部は、「抜本的な騒音対策を取っていない」と、国の対応を批判し、1審より多い3億6900万円の賠償を国に命じました。夜間や早朝の飛行の禁止については認めませんでした。
この裁判は、沖縄県宜野湾市の普天間基地周辺の住民、およそ400人が、軍用機の騒音で被害を受けているとして、国に、夜間から早朝にかけての飛行禁止や、損害賠償などを求めたものです。29日の判決で、福岡高等裁判所那覇支部の河邉義典裁判長は、「騒音によって住民は、睡眠や会話、テレビの視聴が妨げられるなど、精神的な苦痛を受けており、特にヘリコプターやプロペラ機から発生する低周波音が、被害をさらに悪化させている」と指摘し、1審に続いて国に賠償を命じました。2審が認めた賠償額は、1審の2.5倍に当たる3億6900万円で、その理由について、河邉裁判長は、「6年前に普天間基地のヘリコプターが大学の敷地に墜落し、住民の苦痛が大きくなっているのに、国が抜本的な騒音対策を取っておらず、騒音防止協定に基づく午後10時以降の飛行制限も守られていない」と述べて、国の対応を批判し、こうした普天間基地特有の事情を考慮すべきだとしました。一方、飛行の禁止について、「現在の法制度では、国が普天間基地の活動を制限することはできない」という理由で、1審と同様に認めませんでした。アメリカ軍や自衛隊の基地の騒音被害をめぐっては、各地で裁判が起こされ、損害賠償だけを認める司法判断が続いています。判決について、原告団の島田善次団長は「賠償額が増えて低周波音の被害も認められ、60%の満足度だが、肝心の飛行の禁止が認められず不服だ。地元に住んでみないとわからないと思うが、人が住める場所ではないと思う。このことを最高裁判所で訴えたい」と述べました。原告団の新垣勉弁護士は「飛行の禁止が退けられ、司法が政治的なことにいかに消極的かがわかった。司法の役割は政治のゆがみを是正することだと思っているので、最高裁判所に上告せざるをえない」と話しました。また、原告の証人として裁判で証言した宜野湾市の伊波洋一市長は「低周波音の被害を認め、賠償金額が増えたことの意味は大きい。基地はいらないということを市としても、あらためて取り組んでいきたい」と話していました。仙谷官房長官は、記者会見で、「国の主張の重要な部分については裁判所の理解が得られたが、一部については、十分な理解が得られなかった。関係省庁で判決内容を検討したうえで、適切に対処していきたい」と述べました。そのうえで、仙谷官房長官は、「普天間飛行場の危険性を考えれば、一刻も早く移設を実現する必要があると考えており、日米合意を踏まえて、沖縄の負担軽減に精力を傾注しなければならない。今後、移設計画や負担軽減の具体策については、沖縄県をはじめ、地元の方々に、誠心誠意説明し、理解を求めていきたい」と述べました