アキバ連続殺傷男「母から虐待」…被告人質問始まる

　２００８年に１７人が死傷した東京・秋葉原連続殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員・加藤智大（ともひろ）被告（２７）の第１６回公判が２７日、東京地裁（村山浩昭裁判長）で行われた。この日から始まった被告人質問で、加藤被告は「親のせいではない」としながらも、事件の背景には、幼少期からの母親の厳しいしつけがあったことを挙げた。九九ができずに風呂に沈められたり、床の上に散らばった食事を食べさせられたりという“虐待”の数々を語った。

　午前１０時前。加藤被告は黒のスーツに白いワイシャツ姿で法廷に姿を現すと、被害者や遺族が座る傍聴席に向かって深々と頭を下げ「申し訳なく思っている」と謝罪した。

　この日スタートした被告人質問。弁護人の質問に対し加藤被告が明らかにしたのは、母親とのゆがんだ関係と、厳しすぎるしつけだった。

　被告は、事件を起こした原因について「私のものの考え方、掲示板での嫌がらせ行為、掲示板に強く依存していた私の生活のあり方」という３つの理由を挙げた。そのうち、自分が「何か伝えたいときに、言葉ではなく行動で示そうとする考え方」の持ち主となった背景として挙げたのが、母親の「体罰」だった。

　母親からトイレに閉じこめられ２階の窓から落とされそうになったり、九九を間違えた時には風呂に沈められたり。泣くと、口にタオルを詰められ粘着テープを張られたこともあった。また、小学校高学年までおねしょをしていたため、布のおむつをはかされた。

　さらに、食べるのが遅かったため、床に敷いたチラシの上に食事をばらまかれて食べるよう言われたことも。「小学校中学年くらいのとき、何度も…。屈辱的だった」と加藤被告は振り返った。

　一方、被告人質問に先立ち、裁判官は８、９日に青森県内で非公開で行われた加藤被告の両親に対する尋問を説明。その際、母親は「夫が毎日、酒を飲み、帰りが遅く、暴れたり帰宅しないこともあった。イライラして子供に八つ当たりすることがたびたびあった」としながらも「子供に強く当たったのは、あくまでしつけの一環と思っていました」と述べたという。

　母親は被告に有名国立大学に進んでほしいと望み、小学校時代から付きっきりで勉強を教えていたが、その期待の大きさの反動から、厳しすぎるしつけにつながったとの見方もある。

　幼少時からのつらい経験が、加藤被告の“心の闇”を形成してしまったのか。２９日も、弁護人による被告人質問が予定されている。

　◆ネット掲示板での「嫌がらせやめて」　事件で伝わると…
加藤被告は公判で、動機について「利用していたネット掲示板で私になりすます偽者や嫌がらせがあった。事件を起こしたことを報道を通じて知ってもらえば『嫌がらせをやめて欲しい』と言いたかったことが伝わると思った」と話した。

　“ネット依存”については「掲示板は他に代わるものがない大切なもの」「自分が自分に帰れる場所」と説明。ネット掲示板は約２年前にのめり込んだ。当初はゲームの攻略法を書き込む程度だったが、０５年ごろには友人ができ「オタク」を自任するようになった。

　茨城県内の工場に派遣されていた０６年当時には「職場での人間関係が希薄で友人ともメール交換するだけで、直接会わなくなり、孤独感があった。掲示板にのめり込んでいた」という。

（2010年7月28日06時01分スポーツ報知）

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