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広島女児殺害、28日差し戻し控訴審判決…父「複雑な気持ち」

あいりちゃん、「命を奪うことを望まない子だった」

あいりちゃんのお気に入りだったひざの上で写真を抱き、建一さんは「笑顔のかわいい、自慢の娘でした」と語った(広島県海田町で)=杉山弥生子撮影

 広島市安芸区で2005年に起きた小学1年木下あいりちゃん(当時7歳)殺害事件で、殺人、強制わいせつ致死両罪などに問われたペルー国籍のホセマヌエル・トレス・ヤギ被告(38)の差し戻し控訴審判決が28日、広島高裁で開かれる。あいりちゃんの父、建一さん(43)は、まな娘をよく乗せていたひざの上に、遺影を置いて裁判に臨む。

 「あいりは、よく『抱っこして』とひざに乗ってきた。あいりのお気に入りの場所なんです」。判決を前に取材に応じた建一さんは、事件から5年がたとうとする今も、娘のぬくもりをよく覚えている。

 事件直後は、「犯人を決して許さない。この手で殺したい」と思った。今も、極刑を望む気持ちに変わりはない。ただ、4年に及ぶ裁判の長期化は「精神的につらい」と言い、「あいりは人の命を奪うことを望まない子だったと思う。複雑な気持ちだ」とも語る。

 差し戻し控訴審ではヤギ被告の被告人質問は行われなかった。建一さんは「殺される前、あいりは何と言ったのか、どんな表情だったのかを知る被告が、真実を話さないのが残念」と悔しさをにじませ、「あいりの最期を想像してしまうのがつらい」と打ち明けた。

 娘の実名報道を求め、性犯罪の残忍さを訴えてきた建一さん。性犯罪被害者らから、励ましや感謝をつづった100件以上のメールや手紙も届いた。「自分だけじゃないんだ」「勇気をもらいました」との言葉に「あいりの死は無駄ではなかった」と実感する。それが唯一の救いだ。

 「あいり」の名は最初は漢字で、「愛する宝」という意味の「愛璃」にしようと思っていた。かけがえのない宝物だった笑顔。当日、傍聴席に持参するのは、娘がピースサインで笑っている写真だという。

木下あいりちゃん殺害事件 2005年11月、下校途中の木下あいりちゃんが殺害され、ヤギ被告が殺人容疑などで逮捕された。広島地裁での1審は裁判員裁判のモデルケースとして連日開廷などの迅速化が図られ、「卑劣な犯行だが、計画性がない」などとして無期懲役に。2審の広島高裁は「犯行場所を特定していない」などとして1審判決を破棄したが、上告審の最高裁は昨年、「1審は適法」として、高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。
2010年7月20日  読売新聞)
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