EDIUS TIPSTIPS 014 ノートPCが導く編集フローの超効率化

ハイビジョン映像をノートPCで仮編集

近年、小型で持ち運びに便利なノートPCが数々登場している。価格もそれほど高くないため実に手に入りやすくなっている。そのノートPCでEDIUSを使えば、本来の編集環境を離れても、時間や場所を選ばずに編集することが可能になる。もちろん、快適なハイビジョン編集を行うにはハイスペックなノートPCが必要だが、仮編集としてSD素材のカット編集やテロップ作成程度なら今話題のインテル® Atom™ プロセッサー ほどのCPUが搭載されていれば、当社独自の編集用コーデックを使用することによって十分可能となっている。これを上手く使えばかなりのフローの効率化が図れるだろう。
今回は、EDIUSとノートPCを利用した次世代型のハイビジョン編集ワークフローを解説したいと思う。

ちなみに今回の記事を書くにあたっては、HP社製のノートPC「HP 2140 Mini-Note PC(高解像度ディスプレイ バージョン、解像度=1366 x 768)」を使用した。高解像度液晶と高スペックを誇り、余裕のある画面レイアウトで快適に仮編集が可能なのでオススメである。

※ EDIUS推奨のモニタ解像度のスペックは、1024x768ピクセル以上になります

機材協力=日本ヒューレット・パッカード(株)


運用するために

EDIUSはインストールした1台のPCのみでしか使用できないということはない。
他のPCにもインストールしておけば、ドングル(パッケージに同梱されているUSBキー)を差し替えることで複数のPCでEDIUSを使用することができる。もちろんノートPCでも同じだ。

※ ドングルが挿さっていないとEDIUSは起動しません

ドングルを持ち運ぶことに抵抗がある場合は、EDIUS Pro 5よりも値段が安いEDIUS Neo 2を導入してみてはいかがだろうか。EDIUS Pro 5に比べ機能に制限はあるものの、直観的なインタフェースや使いやすい操作性は継承されているので、仮編集を行ううえでは何も問題はないだろう。
なお、EDIUS Pro 5との互換性は保証されていないが、今回試してみたところカット編集やテロップデータなど基本的な要素は引き継ぐことができた(2009年7月6日現在)。
決して勧めるものではないかもしれないが、1つの裏ワザとして考えてみてもよいだろう。

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仮編集用のファイルに変換

それではフローを紹介していこう。
まず、本来の編集室のパソコンでEDIUSを立ち上げ、ハイビジョンのプロジェクトを作成し、素材のハイビジョン動画を仮編集用のファイルに変換する。





使用する素材をビンに登録し、すべての素材を選択し右クリック。
「変換」→「ファイル変換(一括)」を選択。

次のウィンドウで、「ファイルの種類」から「Canopus HQ 低ビットレートSDダウンコンバート」を選択。

保存先の設定だが、外付けのHDDにしておけばすぐにノートPCで使うことができる。 外付けのHDDがなければ、元のファイルと同じフォルダを指定しないように注意して欲しい。
もう一つ注意して欲しいことが、ファイル名は変えないように(変換前のファイル名と同じに)してほしい。これがスムーズに本編集へ移行するためのポイントとなる。
保存をクリックすると変換が始まる。

 ※保存先のフォルダ内に同じ名前のファイルがある場合は、ファイル名が自動で変更されるので注意

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仮編集用ファイルの特徴

変換が終わると、SDサイズの仮編集用のファイルが自動でビンに追加される。
再生してみると、画質が粗くなっていることに気付くと思うが、もちろん本編集はハイビジョンのファイルで行うので気にすることはない。さらに容量を見てみると、元のファイルの約1/17まで小さくなっている。
変換後のファイルを使用することで、スペックの高くないノートPCでも、少容量かつ軽快に仮編集を行うことができるのだ。

これでノートPCでいつでもどこでも編集ができる。
ノートPCでは、出力デバイス「Generic OHCI SD NTSC」、出力フォーマット「720×486 59.94i 16:9」 のSDプロジェクト(目的によっては変わるかもしれないが)で、仮編集していこう。

なお静止画や音楽など、動画以外の素材があれば、動画素材と一緒にコピーしておこう。
また、仮編集の途中で動画素材が追加された場合は、ノートPCのEDIUSで「仮編集用のファイルに変換」の項のように変換を行う。

画質を優先する場合は

荒い画質での編集が、その時の編集内容には適さないこともあるだろう。もっと画に集中して編集したい。そんな時は、変換の際に「ファイルの種類」から、「Canopus HQ 高画質SDダウンコンバート」を選択しよう。これで画質は良くなる。
しかし、多少容量が膨らみレスポンスも遅くなるので、用途に合わせて選びたいところだ。

なお、変換時間と容量の変化、画質の差などをまとめてみたので、参考にして欲しい。

※ 画像をクリックすると大きな画像で見ることができます

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仮編集のコツ

■レイアウト変更

ノートPCはモニタが小さいので、レイアウトをうまく組むことがスピーディーな操作につながる。
以下がレイアウトの変更方法だ。

・位置・・・各ウィンドウ・パレットの、アイコンなどが何も表示されていない部分をドラッグ&ドロップ
・大きさ・・・各ウィンドウ・パレットの端をドラッグ&ドロップ
       隣接するウィンドウも連動して変わるが、Shiftキーを押しながら操作することで連動しなくなる
・統合・・・各パレットのタブを、Binウィンドウや他のパレットのタブに重ねる

なお設定したレイアウトは保存することができる。複数登録することができるので、タイムライン優先時、プレビュー優先時というように、目的によって使い分けると便利だ。

・保存・・・メニューの「表示」から、「レイアウト」→「現在のレイアウトを登録」→「新規」と選び、名前を付ける

・呼び出し・・・メニューの「表示」から、「レイアウト」→「レイアウトを適用」で保存したレイアウトを選択

■ボタン・キーボードショートカットのカスタマイズ

ウィンドウ・パレットの表示範囲が狭くなると、表示されるボタン数も減少する。 表示できる範囲を有効に使うためにも、カスタマイズで必要なボタンのみを表示させておくと良いだろう。
また、カットや削除などよく使う機能はキーボードによるショートカットが用意されており、それらもカスタマイズが可能だ。中にはキーボードショートカットのみに用意された機能もあるので、上手く使いこなすことでより効率的な編集が可能になる。

・ボタンのカスタマイズ

メニューの「設定」から「アプリケーション設定」を開き、「カスタマイズ」から「ボタン」を選択。

[1]からカスタマイズするウィンドウ・パレットを選択。
[2]のリストから追加するボタンを選び、[3]の右向きのマークをクリックすると、[4]のリストに追加され実際の画面でもボタンが表示されるようになる。

逆に[4]から削除するボタンを選び、[3]の左向きのマークをクリックすると、[4]のリストから削除され実際の画面でもボタンが表示されなくなる。


・キーボードショートカットのカスタマイズ

メニューの「設定」から「アプリケーション設定」を開き、「カスタマイズ」から「キーボードショートカット」を選択。

[1]のリストから割り当てる操作を選択し、[2]から「キー割当」をクリック。

キーボードのイラストが現れるので、割り当てるキーを選んでいこう。
 


カスタマイズを保存

プロファイル機能を使えば、ウィンドウレイアウトやアプリケーション設定、カスタマイズ設定などを保存することができる。 複数のプロファイルを作成することができ、ユーザーごとでそれぞれ保存しておくことができるので、複数人で同じ EDIUS を運用する場合は大変便利な機能だ。

メニューの「設定」から「プロファイル切り替え」を選択すると、現在選択中のプロファイルを確認することができ、また、ここから新しいプロファイルを作成できる。カスタマイズは選択中のプロファイルに自動的に保存される。プロファイルの書き出し・読み込みも可能なので、他のEDIUSを使う場合でも、自分の使いやすい操作環境で編集していくことができる。

ちなみに、起動時の画面でもプロファイルの選択や新規作成が可能だ。

※ プロファイル機能は、EDIUS Pro 5 の機能です

■再生が停止してしまうとき

[スペースキー]のみで再生した場合は、再生しながらバッファをためるので、PCのスペックが低い場合などにすぐ再生が停止してしまうことがある。 そんな時は、[Shiftキー] + [スペースキー]でバッファをためて再生することができ、バッファがたまっている間はリアルタイム再生が可能になる。
また、メニューの「設定」から「ハードウェア設定」を選び、「リアルタイムDV出力を有効にする」のチェックを外すと、リアルタイムで再生できるようになる場合があるので、一度確認してみて欲しい。

ちなみにバッテリー電源で稼動していると省電力モードとなることがあり、その際はCPUの速度が低下する場合がある。この状態ではリアルタイム再生ができないことがあるので、各自お使いのノートPCの設定を確認して欲しい。

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仮編集から本編集への移行

■ファイルの置き換え

ノートPCでの仮編集を終え本編集に移行するには、素材を元のハイビジョン動画に置き換える必要がある。
そのために、まずノートPCで仮編集したSDプロジェクトファイルを、本来の編集機にコピーする。

※ タイトルを作成したり、素材が追加されている場合は、そのファイルも一緒にコピーしてください

そしてコピーしたプロジェクトを開くと、使用したファイルが全てオフラインクリップになっているので、「オフラインクリップ復元ダイアログ」を開く。

キーボードの「Ctrl」+「A」を押して全てを選択し、「再リンク(フォルダを選択)」で変換前のハイビジョン映像が保存されているフォルダを選択。そうすると、オフラインになっていた動画クリップが、すべて変換前のハイビジョン映像に置き換わる。

※ タイトルクリップや追加された素材などが別のフォルダにある場合は、同じようにフォルダを選択し復元してください



オフラインクリップを復元できない場合

AVI以外のハイビジョン映像を変換した場合、またはファイル名を変更して変換した場合は、「再リンク(フォルダを選択)」からでは復元できないので、オフラインクリップを一つずつ選び、「再リンク(ファイルを選択)」から変換前のハイビジョン映像を指定してやらなければならない。

保存されているフォルダを開いても変換前のハイビジョンファイルが現れない場合は、「ファイルの種類」から「All file」を選ぶとファイルが選択できるようになる。

特に注意すべきことは、変換前のファイル名・拡張子と同じものを選ばなければならないということだ。 別のファイルを選ぶこともできてしまうので、その場合は編集内容がまったく別のものになってしまう。

■プロジェクト設定の変更

オフラインクリップの復元を終えた後、プロジェクトをハイビジョン素材に合わせて変更しなければならない。

メニューの「設定」→「プロジェクト設定」を選択。

次のウィンドウで、「現在の設定を変更」から、目的の解像度に変更する。

変更後のハイビジョンのプロジェクトで本編集を進めていこう。

※ プロジェクトの変更によりエフェクトの効果・設定が変わる場合があります


タイトルクリップの補正

編集の途中でプロジェクトを変更すると、作成したタイトルクリップが意図していない不自然な見え方になってしまうだろう。これを修正する(通常の見え方に戻す)には、一度タイトルクリップをダブルクリックして開き、そのまま保存し直そう。 これで作成したときと同じ状態に戻すことができる。



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理想の編集スタイルを

ノートPCを使用することで編集作業がより効率的になり、その結果生まれる時間的・精神的な余裕が、作品のクオリティをさらに高いものへと押し上げていく。EDIUSにはそれを可能にするだけの柔軟性がある。
決して快適とは言えないため万人に勧めるわけにはいかないが、もし運用できる環境を持っているユーザーは是非今回の記事を参考に、そこからさらに自分の理想のスタイルを築きあげていってほしい。

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トムソン・カノープス