著作物は1人で創作される場合ばかりではなく、複数の人が協力しあって
制作されることもよくあります。このような著作物の形態には2種類あると
されています。
そのうちのひとつである「共同著作物」についてみていきたいと思います。
◆ 十二 共同著作物
* 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を *
* *
* 分離して個別的に利用することができないものをいう。 *
文字通り、2人以上の者が共同して創作した著作物をいうのですが、条文
の後半は少しわかりにくいかもしれませんね。全体を通して「共同著作物」
であるための要件をみていきます。
【1】2人以上の者が創作に携わっていること
先ず前半部分の『二人以上の者が共同して創作』することが必要になりま
す。つまり、2人以上の者それぞれが『創作』を行っていなければなりませ
ん。
例えば、一冊の絵本が制作される過程で、Aさんがストーリーやキャラク
タなどのアイデアを出して原版を作成し、Bさんがそれに色塗りや仕上げを
行ったとします。
この場合、Aさんは絵本という著作物の制作について創作的な関与をした
のに対し、Bさんの作業は「創作」というよりは「機械的」な補助的役割で
あるとして、共同著作物ではなくAさんの単独の著作物となります。
これが、Aさんはストーリーに基づいた文章を、Bさんはキャラクタなど
の漫画の部分を担当(創作)した場合は、共同著作物となります。
【2】各人の創作部分を分けてしまったら利用できないものであること
例えば、よく例示されるのが座談会や討論会などの著作物です。このよう
なものを「言語の著作物」といいます。
座談会での参加者の発言は、誰かが話した意見に対してまた誰かが意見を
述べ合うようなかたちですので、その各人の発言だけをバラバラに切り取っ
て並べてみても、意味が通じない場合が多いはずです。
各々人の意見の応酬でひとつのテーマが成り立つ、つまり各要素がひとつ
になってはじめてひとつの著作物になるものを共同著作物といいます。
これに対して、複数の執筆者で一冊の本が構成されることがあります。例
えば「第1章 ○○教授」「第2章 □□弁護士」「第3章 △△助教授」
などのケースです。
これは、確かに複数の人が関与して一冊の本が出来上がっていますが、執
筆者各自の担当した章はそれぞれ創作的な著作物であり、これらは『分離し
て個別的に利用する』ことも可能なものですから、共同著作物には当たらな
いことになります。
この場合は、単独の著作物が結果的に「結合」しているにすぎないことか
ら「結合著作物」と呼ばれています。
補足的に、共同著作物の利用に関する権利関係について少しだけ。
共同著作物の各著作者は、その著作物に関する著作権を全員で共有してい
ます(共有著作権といいます)。ですから、共同著作物を利用する場合(著
作権の行使)は、全員の同意を得なければなりません(法64、65条)。
これに対して、結合著作物の場合は、外観上は1つの著作物ですが、全体
の創作に関しては共同ではなく、単独の著作物の結合にすぎません。
ですから例えば、歌などの「音楽著作物」で作詞家と作曲家が別の人であ
る場合、詞だけを雑誌などに載せたいときは、作詞家の許諾だけを得ればよ
いということです。
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