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医療ナビ:胎児のエコー検査 精度向上で先天異常も分かるように。

 ◆胎児のエコー検査 精度向上で先天異常も分かるように。

 ◇事前同意の検討進む 知りたい情報どこまでか、診断後のサポート不可欠

 胎児と妊婦の状態を調べるため、広く行われている超音波(エコー)検査。精度が向上し、エコー検査で先天的な異常もわかるようになっているが、受診する妊婦に周知されていないのが実情だ。予期しないまま胎児の異常を知らされるケースも起こっているため、検査前に同意書を求めるなど、対策の検討が始まった。

 「超音波スクリーニング(ふるい分け)を行う際の同意について、産科医の方はどうしていますか。それ以外の方はどうすべきだと思いますか」

 神戸市で今月開かれた日本周産期・新生児医学会学術集会。会場を埋めた産科医や小児科医ら500人にパネリストが問いかけた。スクリーンに映し出された集計結果は、▽同意は取っていない35%▽口頭で同意を取っている36%▽書面で同意を取っている29%。産科医に限ると口頭・書面で同意を取っているのは34%。また小児科医と小児外科医は90%以上が「同意を取るべきだ」と答えた。

 エコー検査は、妊婦と胎児の状態を把握するために必須の検査。超音波スクリーニングはエコー検査を元に胎児の先天的な異常がないかを調べることを指す。

 エコー検査が産科に登場したのは約20年前。当時は画像も不鮮明だったが、現在では胎児の表情まで確認でき、動画も撮影できる高性能の検査機器が登場している。「少子化の時代だけに開業医にとって来院者獲得に欠かせないツール」(メーカー担当者)という。

 だが、機器の高性能化に従い、エコー検査の画像から先天的な異常を確認する技術も向上した。現在は、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)などの形態異常を確認することができるほか、胎児のうなじの部分の厚みを診てダウン症の可能性を推定することもできる。事実上の出生前診断と言える状態で、この結果、胎児の先天異常を思いがけず知らされた妊婦がノイローゼ状態に陥ったケースもある。

 学会シンポジウムを企画した斎藤滋・富山大教授(産婦人科)は「産科医にとってのエコー検査は、聴診器のようになくてはならない検査」と話す。産科医の間では「母体を傷つける検査ではないのだから、同意書まで取らないと検査できないのはおかしい」との意見もある。斎藤教授は「『同意は必要ない』という考えが産科では一般的。しかしシンポジウムで示されたように、産科以外の医師が『同意を取るべきだ』と思っている事実は重い」と話す。

 調査結果を受け、富山大ではエコー検査で判明する▽性別▽染色体異常の可能性▽生まれた直後に手術が必要な病気の可能性--などの情報のうち、何を知り、何を知りたくないのか妊婦と家族に確認する書面を作成した。近く導入する方針という。昭和大(東京都)や大阪大(大阪府)など他の大学病院でも、エコー検査の前に妊婦や家族と話し合い、「どこまでの情報が知りたいのか」「どんな情報は知りたくないのか」を確認する動きが出ている。

 長年小児科医療に携わってきた淀川キリスト教病院(大阪市)の船戸正久・老人保健施設長は「エコー検査で、多くの診断ができるようになった以上、産科医も意識を変え、事前に同意を取る時代になる」と指摘する。また結果を受け、妊婦と家族が胎児をどう治療するか決めるために、「精神的なケアも含めたサポート体制が必要だ。長く生きられないことが分かった場合でも、おなかの中で可能な限り育て、みとるという選択肢もある。検査で異常が分かった場合、胎児にとって何がベストなのか。議論すべきだ」と話している。【曽根田和久】

毎日新聞 2010年7月28日 東京朝刊

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