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記者座談会:参院選を振り返る 民主、票分けに成功 安井氏に応援集中 /愛知

 11日に投開票された参院選は、全国的には民主の敗北に終わったが、新人7人による激戦だった愛知選挙区(改選数3)では民主2、自民1の改選議席が維持された。加藤潔、丸山進、高橋恵子の担当記者3人が選挙戦を振り返った。(司会=長沢英次・報道センター副部長)

 --終わってみれば民主2、自民1。過去2回と同じ結果だった。

 丸山 当初は民主の2人の差が20万票開くかなと思っていた。実際は8万票なかった。最後の1週間、安井さんの陣営には蓮舫行政刷新担当相、鳩山由紀夫前首相のほか、菅直人首相本人が1回に伸子夫人が2回と、これ以上はないというくらいのオールスターが応援に来た。斎藤さんの方にはほぼ行かず、安井さんばかりだったので、「そんなに安井さんは危ないのか」と有権者の危機感をあおった。

 高橋 最後の週から県内の民主党国会議員の大半が安井さんの応援に入った。「斎藤さんはもういいから安井さんを」という感じで。斎藤さんは1年間がんばって掘り起こした票を取られたようで、かわいそうな気もした。

 丸山 斎藤派の市議は「そんなに向こうにやっちゃっていいのか」と話していた。「応援が来るなら斎藤さんも同席させたい」と申し出たが「安井さんの方が危ないから」とけられたそうだ。

 高橋 斎藤陣営はパーフェクトと言っていい戦い方だった。大きな演説会などは前半にもってきて、あとは街頭に徹した。七夕祭りをやったり、名古屋の広小路通を200人が練り歩くとか、いろんな仕掛けがあった。

 丸山 安井陣営の運動が軌道に乗ったのは最後の1週間という気がする。圧倒的に斎藤陣営の方がうまかった。

 --結局は、愛知県の民主党の力で2人当選させたということかな。

 高橋 労働組合の力が大きい。

 加藤 2人合わせて140万票。うまく分ければ2人当選と、民主も他陣営も見ていた。問題はうまく分けられるかどうか。きちんと運動をした斎藤さんに票が集まりすぎて、安井さんに行かないんじゃないかという懸念が当初からあった。それが結果としてはうまく分けられた。

 高橋 最後に安井さんが取ったのは内輪の票と言われている。斎藤さんから取ったわけだよね。前回参院選で当選した谷岡郁子さんは、外の票を取りに行ったはず。本来、安井さんも外の票を取らなきゃいけなかったけど、できなかった。そうなると民主票を割るしかない。それで「斎藤さんはもういいから安井さんに」という号令になった。

 --外の票を取れなかったのは、民主への逆風があったから?

 加藤 出口調査も世論調査も、無党派はみんなの党の薬師寺さんと自民の藤川さんへ流れたとの結果だった。

 丸山 安井さんの方は最初から、「無党派層は狙えない。中の票を」という感じだった。

 --安井さんは、当選しても淡々としていたようにテレビでは見えた。

 丸山 あの人はあれがマイナス。落ち着き払っていて、本人もクールさを売りにしていたんだけど、公示後には「熱い思いを表に出すことも必要だと気付いた」って言っていた。

 --公開討論会では、頭のいい人なんだなと感じた。

 丸山 その頭のよさが近づきにくい雰囲気を生んでしまった。なかなか支持が伸びなかった理由の一つだと思う。

 ◇藤川氏は予想以上

 --自民の藤川さんについて。

 加藤 予想以上に票を伸ばした。民主の評判の悪さもあったが。

 高橋 支持政党なし層で藤川さん支持が多かったけど、そういう人たちは元は自民支持だったのでは。その人たちが、自民支持に戻ったとは言わないけど、藤川さんには入れたということかな。

 ◇大健闘の薬師寺氏

 --みんなの党の薬師寺さんについては。

 加藤 50万票以上は大健闘だ。

 丸山 昨年の衆院選の県内の比例代表で、党は18万票だった。

 加藤 3年前に公明の山本保さんが58万票で落選したけど、かなり取った方だった。薬師寺さんの52万9000票というのは、組織がない中では極めて多い。

 --何でこんなに取れた?。

 高橋 やっぱり消費税の問題だね。増税をいやがる人は、みんなの党に入れやすかった。

 加藤 党の歯切れのよさ、期待度に候補者の魅力が重なった。薬師寺さんが活動を始めた4月ごろは、街頭での訴えに足を止める人はいなかった。2カ月、3カ月たつと、立ち止まる人も出てきた。医師としての経験から医療改革の必要性を訴え、消費税増税の前に公務員のリストラをすべきだと主張していた。

 高橋 薬師寺さんは、鉢巻きを巻くとかダルマを置くとか、そういう選挙のスタイルを変えると言っていた。服装も、急に派手なTシャツなんかを着たりせず、自分のスタイルを崩さなかった。

 加藤 陣営もアマチュア的だった。事務所は喫茶店を改造したような所で、そこにスタッフが集まって意見を出し合いながら夜中まで運動の方法を考えていた。記者からすると、なかなか翌日の予定が決まらないので早くしてほしいと思ったりしたが、そういうアマチュア的なところが薬師寺さんのスタイルと合った。

 高橋 組織がないことがメリットだ、と彼女自身も言っていた。

 加藤 組織がない分、自分をアピールするために公示前にはツイッターを多用していた。「今、栄で演説してます」とか、「次はどこへ行きます」とか。

 丸山 安井陣営は、「なんで薬師寺さんがこんなに伸びるのか分からない」と言っていた。田舎へ行くとポスターを張り切れていない。組織の視点は、そんなことで広く浸透するわけがないというのが常識らしいけど、全然関係なかった。

 高橋 全部張るのに1週間かかったって言っていたよ。

 丸山 薬師寺さん本人がポスターを張っている映像がテレビで流れていた。パフォーマンスにも見えたけど。

 加藤 街頭を回っていてポスターがない所を見つけたら、本当に自分で張っていたようだ。

 丸山 開票の時には、当落が決まる前に本人が事務所に来ていたよね。

 加藤 別の所で待っていて、決まったら出て来る、というのが普通だけどね。

 高橋 支持者と一緒にテレビの開票速報を見ていた。

 --今後のみんなの党は?

 加藤 来年の県議選、名古屋市議選に公認候補を擁立すると言っている。今回の50万票はそれにつながる可能性はある。

 丸山 公明党は、県議選でみんなの党の候補をぶつけられるのでは、と警戒している。

 --共産の本村さん、社民の青山さんは?

 丸山 共産党は3年前から10万票も減らした。一方、社民は結構取った。前回の1・5倍。連立離脱で筋を通したのがよかったのか。

毎日新聞 2010年7月13日 地方版

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