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きょうの社説 2010年7月28日
◎談合の罰則強化 疑惑に関係なく必要な措置
奥能登の談合疑惑を受け、県が談合の罰則を強化したのは、公正取引委員会の検査の行
方にかかわらず、「やり得」を許さないための必要な措置である。県の制度では、談合が立件された場合、指名停止期間は落札業者が「12カ月以上」、 それ以外の業者は「4カ月以上」となっていたが、一律「12カ月以上」に改められた。談合が業者間の話し合いで決まり、仕事を分け合う構図がみられる以上、落札者以外にも同等のペナルティーを課すのは、抑止効果を高める点で理解できる。 奥能登の談合疑惑では、公取委が県奥能登土木事務所管内の業者68社と鳳輪建設業協 会など7団体、輪島市、県出先機関などを立ち入り検査した。県はこれを受け、発注工事の入札を凍結していたが、「災害防止に向けた事業に影響が出る」などとして28日からの再開を決めた。 これだけ多くの建設業者が検査の対象になったこと自体、業界への疑念を抱かせるもの である。入札の凍結解除は本来なら公取委の結論を待ちたいところだが、全容解明には長期化が予想され、必要性の高い工事をいたずらに遅らせるわけにもいかない。悩ましい判断ではあるが、再開を決めたからには、従来にも増して厳格なチェックをしてもらいたい。 談合が後を絶たないことから、罰則の指命停止期間は全国的に長期化の傾向にある。だ が、処分業者が多数に及んだ場合、地域経済や雇用への影響、あるいは災害復旧、除雪作業の停滞などを理由に、救済措置が相次いでいるのが現状である。 岩手県では今年4月、公取委の談合認定を受け、76社に対し、原則12カ月の指名停 止期間を半分の6カ月に短縮している。せっかくの罰則強化も、特例が認められれば抑止効果は薄れることになる。その温情があだとなり、「みんなで渡れば」といった安易な意識を業界に植え付けることにもなりかねない。 奧能登の談合疑惑も、公取委が独禁法違反を認定した場合は、地域の公共工事などに大 きな影響を及ぼす恐れがある。罰則を強化した発注者側には、それを貫く意思も問われることになろう。
◎口蹄疫終息へ 国主導の危機管理強化を
宮崎県の家畜伝染病・口蹄疫問題は、同県の非常事態宣言の解除により、発生から3カ
月を経てようやく終息に向かい始めた。約29万頭の牛・豚を殺処分した地元畜産農家の悲痛を思うと胸が痛む。この悲劇を二度と繰り返さないためにも早急に家畜伝染病予防法を改正し、国が前面に立って迅速に対応する仕組みをつくってほしい。殺処分の命令や移動・搬出制限区域の設定といった重要な決定は、やはり都道府県では なく、国が責任を持って行う必要がある。これほど感染が拡大すると、一自治体の手に余り、意思決定が遅れてしまう。また、権限が自治体側にあると、どうしても地元の利益を優先しがちになる。今回も殺処分の決断が遅れたり、種牛の延命などで「特例」が乱発されるなどした。国が主導権を持って、国家防疫の観点から、最善の判断が下せる体制を構築したい。 1951年成立の家畜伝染病予防法は、今日のような畜産農家の大規模経営を想定して いない。たとえば殺処分した家畜は、自己所有地に埋めるよう定められているが、ほとんどの畜産農家には不可能だ。感染していない家畜にワクチンを接種して殺処分する予防措置も同法に規定がなく、6月に時限立法の口蹄疫対策特別措置法を施行して、急場をしのいだ。法の不備が結果的に被害を拡大させた側面は否めない。 今後、口蹄疫や鳥インフルエンザが発生しても最小限の被害で感染の封じ込めが可能な 仕組みをつくらねばならない。家畜伝染病予防法を改正し、国に権限や情報を集中させ、早期発見のシステムや情報の一元管理、自治体との連携・協力体制をスムーズに構築するためのルールづくりを急ぎたい。感染経路を突き止めるための強制調査の権限を、国に与えることも考えてほしい。 今回の口蹄疫問題では、国と宮崎県が対立する場面が数多く見られ、隣県の鹿児島や熊 本は、封じ込めが後手後手に回った宮崎県に不信感を募らせた。失敗から得た教訓を無駄にせず、家畜伝染病対策の強化に生かしてもらいたい。
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