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口蹄疫「非常事態」解除 対応後手、ドタバタ3カ月

7月27日7時57分配信 産経新聞

口蹄疫「非常事態」解除 対応後手、ドタバタ3カ月
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口蹄疫対策本部の会議であいさつする菅直人首相(奥右)=27日午前、首相官邸(酒巻俊介撮影)(写真:産経新聞)
 家畜の移動制限の完全解除までに約3カ月を要した口蹄(こうてい)疫。初期には対応が遅れて被害が広がり、終盤には民間種牛の殺処分をめぐり国と宮崎県が対立するなどドタバタ劇の連続だった。経緯を振り返りながら、大きな犠牲の教訓を探った。(高橋裕子)

[フォト]これまでの口蹄疫の経過 3カ月で大きな犠牲

 ◆初動で明暗

 最初の感染疑い例が確認されたのは4月20日。だが、農林水産省の疫学調査チームの調査で、20日時点で少なくとも10農場以上にウイルスが侵入していたことが判明。結果的に約1カ月間もウイルスが野放しになっていたとみられる。

 初動で県が設置した車両の消毒ポイントは4カ所。畜産関係車両だけが対象だった。感染は幹線道路沿いにジワジワと拡大した。一方、感染を1カ所で抑えた都城市は感染前から県の消毒ポイント以外に市独自に9カ所を設置。感染発生後はすぐに4カ所増やし、対象を全車両に拡大した。初動の消毒の徹底で明暗が分かれたともいえる。

 都道府県の防疫の最前線に立つのは「家畜保健衛生所」だが、九州で畜産の盛んな鹿児島県に6カ所、熊本県に5カ所あるのに対し、熊本県の2倍以上の畜産産出額を誇る宮崎県には3カ所しかない。

 疫学調査チームは「都道府県は今後に備え、発生時に大量の人材・資材を投入するための体制構築に努めること」と提言している。

 ◆甘さ浮き彫り

 また、チームは感染拡大の要因を「症状の確認の遅れや、埋却地の確保に手間取り殺処分と埋却が遅れたこと」と指摘する。

 前回(平成12年)の口蹄疫の経験を生かし、国は家畜伝染病予防法と具体的な防疫方法を示す防疫指針を整備。埋却地については、都道府県があらかじめ市町村などと協議して確保に努めるよう定めた。

 だが、指針には埋却地が不足するほど流行した際のノウハウはない。県も「埋却地について大ざっぱな計画しかなかった」。対応は後手後手となった。

 感染が広がっていた5月の大型連休に赤松広隆農水相(当時)が外遊したことも大きな失点に。発言のブレも混乱に拍車をかけた。

 埋却地が不足した県と、十分な指針を備えておらず、トップが一時不在だった農水省。両者の対応からは認識の甘さが浮き彫りになった。

 ◆国と県の対立

 7月には民間種牛の殺処分をめぐる国と県の対立で、家畜の移動制限解除が一部遅れる事態も起きた。一貫して殺処分を求めた国に対し、殺処分と救済の間で揺れ動いた県の対応のブレが、所有者も巻き込み混乱を招いたといえる。貴重な種牛をめぐる県の対応は、殺処分対象となった県の種牛49頭が未処分と分かるや国へ特例救済を求めたり、本来なら殺処分対象の5頭を特例救済するなど、一貫性がなかった。

 民間種牛も県にとって必要ならば、感染が広がる前に保護することもできたはずだが、東国原(ひがしこくばる)英夫知事は「県の種牛の避難に手いっぱいだった」と釈明した。

 激しく対立した山田正彦農水相と東国原知事。本来協力して防疫に当たるべき国と県の対立は、解決後も互いのブログ上でくすぶり、所有者も不満を示すなど多くのしこりを残した。

 10年前に宮崎県とともに口蹄疫を経験した北海道の担当者は「防疫に感情の入る余地はない。例外は極力避け、冷徹にやることが求められる」としている。

 ■規模に応じた体制作りを

 ≪村上洋介・帝京科学大教授(動物ウイルス学)の話≫

 口蹄疫は症状がなくてもウイルスを出す邪悪な病気。十分に調査し、体制の漏れを検証することが大事だ。現行法で防疫の主体は都道府県だが、発生規模やウイルスの性質により、都道府県や農水省、最終的には国を挙げてと、対応主体をスムーズに変える体制を作っておくべきだ。

 WTO(世界貿易機関)のルールでは、口蹄疫が発生していない「清浄国」として国際的に認められなければ、発生国からの輸入を断れない。清浄国への復帰は国内で安全な畜産物を食べる上で重要だ−という観点で国も都道府県も対応や備えをすべきだ。

 口蹄疫は東アジアで頻発し、これで済むとは思えない。ウイルスには7種類あり、今回のO型タイプは比較的やさしいもの。もっと大変なものも存在する。こうした病気が世界にあることを一般の人も認識し、「家畜の感染症が大きな影響をもたらす」ということを忘れないでほしい。

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最終更新:7月27日11時27分

産経新聞

 

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