長期金利の低下傾向が続くなか、住宅ローン金利の引き下げ競争が過熱している。人数限定で金利ゼロの住宅ローンを販売する銀行も現れ、デフレ商戦は過激さの一途。なかには利益度外視の競争に対する厭戦ムードも漂うが、少しでも顧客基盤を拡大したい銀行にとっては引くに引けない事情もあるようだ。
「先着500名さまは住宅ローン金利ゼロ」
こんな過激なキャンペーンを行ったのは東京スター銀行。募集期間は6月21日から7月30日までだが、7月7日には早くも定員の500人に到達した。
一方、住信SBIネット銀行は7月の住宅ローン金利を0・975%とし、1%を切る水準にした。しかも契約者が死亡したり病気になったときに返済を肩代わりしてくれる保険契約の保険料は銀行側が負担するという大盤振る舞いだ。
このほか、三菱東京UFJ銀行が1・075%、新生銀行が1・1%の変動金利を提示するなど、新旧勢力入り乱れての金利引き下げ競争が加速している。
引き下げの背景にあるのは長期金利の低下だ。10年物国債の利回りは22日、7年ぶりの低水準である1・045%まで低下。このことが住宅ローン金利を引き下げさせる余裕を与えている。
ただ、争いの渦中にある銀行からも「今の金利はかなりディスカウントした水準だ。そろそろ値下げ競争から足を洗いたい」(関係者)との声も漏れる。東京スター銀のゼロ金利キャンペーンも「事務手数料が収益源となり、来店客の増加につながったことは事実だが、継続的に実施できるほど大きな利益を稼げるわけではない」(同行)という。
このため、一部銀行は金利引き下げよりも、住宅ローンアドバイスといったコンサルティング業務で利用者にアピールする動きを活発化。ソニー銀行が6月24日にJR東京駅前に初の住宅ローン相談窓口を設置した。
各銀行にとって住宅ローンは個人顧客の囲い込む重要な戦術となる。特にインターネット専業銀行など新興勢力にとっては、住宅ローンが業務拡大の決め手となるだけに各行の競争はさらに熾烈になりそうだ。