広島湾岸の交通動脈である広島高速3号は、4月に広島市中区の吉島ランプ(出入り路)までが部分開通し、残る西区観音までの2・9キロの区間で工事が本格化している。2014年春の全通を目指す。ただ、中区の江波地区ではランプの設置見送りをめぐって住民から不満も出ている。
広島南道路を構成する高速3号は、広島県と広島市が出資する広島高速道路公社が整備を進めている。南区の仁保ジャンクション(JCT)から観音までの7・7キロが計画区間。仁保―吉島間4・8キロが部分開通している。
残る観音までの区間が2・9キロ。西端の観音ランプの手前に料金所を設け、有料の高速道はここが終点となる。そこから先は高架の無料道路を建設し、太田川放水路を橋で渡って西部ランプで下りる構造だ。また、高速道の側道として国が国道も整備する。
買収対象エリアは8万6千平方メートル。国と市が買収を進め、昨年度までの費用は196億円、本年度は42億円を投じる。側道を含めた用地買収は7割が完了。民家が立ち退いた後に空き地が目立ち、高速道の橋脚が姿を現している。
市南部を東西に貫く高速3号が完成すれば、中心部の交通渋滞の緩和が期待できる。
計画区間にある江波地区ではランプの設置が見送られ、一部の住民が反発している。
江波地区には当初、西向きの入り口、東向きの出口のランプが設置される計画だった。だが、市は04年、国の交通量予測の下方修正を受け、整備計画全体を見直し、約30億円かかる江波ランプの整備も見送った。
それ以降、市や公社は個別の買収交渉などで説明することはあったが、周知する場を設けることはなかった。今年6月に初めて、江波地区町内会連合会の要請で地元説明会を開催。住民123人が参加し、早期のランプ設置を求める声が出た。
江波地区では高速道建設が浮上した1996年ごろから反対運動が起きた。地区の中央を東西に走る高速道ができれば「一帯が分断される」との危惧(きぐ)からだった。
用地買収が進むに連れ、活発な反対運動はなくなったものの、江波商店街振興組合の白根忠治理事長(65)は「立ち退きが進み、住民は危機感を持っている。地域活性化のためにランプは必要だ」と求める。
市道路計画課の野田和宏課長は「説明が不十分で申し訳なかった」と陳謝。一方、江波地区から約1・2キロ西側に観音ランプを設けるため「利便性は保てる」としている。
【写真説明】高速3号の建設に向けた買収が進み、空き地が目立つ広島市中区の江波地区。橋脚(奧右)も姿を見せ始めた
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