少し夜語り

「このＣＤ―Ｒの中には、女性を洗脳するプログラムが入っています。使用には十分な注意が必要となりますので、説明書は必ずお読みになってください」


　馬鹿馬鹿しいと思ったが、つい、買ってしまった。「洗脳ディスクＶＯＬ．１」、だってさ。まあ、これも若さゆえのなんたらという奴だろうな。だけど、こんな露骨に妖しいＣＤ、良く売り出せたもんだな。つうか、海賊版ＤＶＤと一緒に売ってるって、どういうことよ。さすが日本一の電気街といったところか？
でもあの黒人さん、日本語ぺらぺらだったけれど、読むほうはどうも出来ないみたいだな。このディスクも映画だと思ってた感じだしな。仕方ないね。
　ああ、何時帰ってもきたねえな、俺の部屋。たまには掃除しなきゃな。ん、うわっ！
　この　　このやっろ
　
　

ふう。いい加減、バルサン焚かないとな。
　
んーと、何々、「このＣＤ―Ｒの中には、女性を洗脳するプログラムが入っています」だ？はははっ。
ヘッドフォン、ああ、ちゃんとささってるな。
ああ、やっぱ駄目、パソに入れるのはだめだよな。ウイルスあるかもだしな。

ええと、ラジカセラジカセ。


あああ、ほこりかぶってる。



よし。やっぱ警戒しないとな。
さて、試しに聞いてみるか。って、いいのか。これが万が一本物だとして……いや、ないない。

ん、何だ、いいところなのに。

はーい、どちらさま
「兄貴！元気にしてる？」
　あ、お前か、男女。
「何言ってるのよ、可愛い妹が遊びに来たのに」
　つうか、俺がドア空ける前に先に開いただろ。やめろよなあ。
「いいじゃない」
　ああ、黙ってろ黙ってろ。俺は今いそがし
「ほらあ、また部屋汚れちゃってるよー。妹が来て正解だったね、あ、に、き！」
　うるさいなー。






　はあ、やっぱり上手いなあ、お前のつくるチキンラーメンは。
「何それ、嫌み？兄貴の冷蔵庫攫っても卵とそれぐらいしかなかったんだから」
　あはははは。
「はあ、野菜とかあったら炒め物とかできたのに」
　自炊、しないからな。



「あ、これ、何？」
　ああ！駄目だっ、止めろ！返せ！返せよ！
「だーめっ。……なになに。はぁ、洗脳？兄貴、こんなバカなのどこで手に入れたのよ。ていうか、変態？」　
　

……あのな、実はそれ、友達とアキバ行ったときな、罰ゲー
「ああ、そうなの。ふーん」
　そ、そうなんだよね。ははは。


　お、聞いてみるのか。
「兄貴が興奮する内容か、女の視点で聞いてみるってね」
　ふーん。まあいいけど。百円だし。
「百円だったら罰ゲームにもならないんじゃない？あ、なんか始まった」
　そのタイトルが既に罰ゲームなんだよ。



　大人しくなったな。どうした？
「……え？」
　え、じゃない。いきなり黙ったじゃないか。
　
　ははあ、お前さては、かかったな？というか演技？

　やめろよ、なんか話せ。お前が静かだと調子狂うだろ。
　つうか、お前、黙ってるとやっぱ可愛いよな。美人だし。俺、兄だけど、彼氏がすんごく羨ましいぜ。

　
　おい、ちょっと、なあ。
　
「はい……そうです」
　何ぼんやりとした声だしてんだ。

　
　外すぞ、ヘッドフォン。素人演技してんじゃねー。
「あっ」
　あっ、じゃない。なかなかの演技だったのは認めるがよ。兄を馬鹿にするの
「　　　あ　　　　　あ　」
　どうした。
「わ　　　わ　　た　」　
　何言ってるんだ。それに、そのぼんやりとした顔やめろ。しゃんとしな。お前らしくないぜ。
　
　わっ、お前、いきなり倒れるなよ！！

　

起きろよ。おーい。


叩いても起きねー。




まさかマジ物？嘘だろ？
そんなことより、説明書！！







なになに、「強烈な洗脳催眠により、女性をあなたに従順にする」だぁ？
いや、
どうやって治すんだよ。








はあ、とにかく。最終パートに解除音声があるんだな。でも、最初から聞かせないと効果なし、と。







「はい、わたしは……」
　これから三十分か。なんだこれ、とんだことになっちゃったな。
「はい、したがいます」
　やっぱお前、色々とエロイな。あいつにもそんな声、だしてんだろうなぁ。


「はい、したがいまふう」
　おいっ！！お前何して、こら！
「せいかんを、あああ、たかめんん！」
　いきなりオナニーしだすって、一体どんな音声聞いてるんだよっ！！





「もっと。ああ。あああ」
　落ち着け、落ち着くんだ。
　最終パートが解除。最終パートが解除だからな。
　今ここでやめれば水の泡だ。だから。



　よし、とりあえず雪奈から眼を離そう。くそ、俺の妹なのによ、なんで、なんで妹の、その、オナニー、見て興奮してるんだ、俺は。


「あ、あああああああ！！！」
　こらっ！大声あげるなよ！！ここアパートだぞ！！
「んっ！んんんっ！！」
　イッた？ああ、すげえ、これが女の絶頂って奴か。初めてみた。


「ん　　　　はぁあ」
　お、止まった？

　ていうか、ああ、床汚れちゃってるよ。あとで掃除しろよ。
つうか、こいつも、その、股から出すんだな。愛液っていうやつ？
うわ、女の顔だ、こいつもこんな顔するんだな

あいつ、妹とやってるんだよなあ……色々と許せなくなってきたなあ。



「はい、わたくし、ゆきなぁ、は、したが」
聞くな、俺は雪奈の兄貴だぞっ。









　終わったのか。
　終わったん、だよな？
　
　おい、雪奈？ゆーきーなー！
「ん」
　気が付いたか。
　ははは、あれ、マジ物だったよな、マジ物！どうだった？お前単純だからな、まさか
「ご主人様」
　
　
は？
「わたしはあなたの下僕でございます。なんなりと御命令を」
　
　ちょっ、ちょっちょっちょっ！！！

　おい、やめ！こら。
「まずはちゅうせいのあかしに、あなたをきもちよくいたしますわ」
　おまえ、こらあゆーきーな
「ここが、よろしいのですね」　
　そんなエロい声、お前のキャラじゃないだろーが！つか、解除は？解除でき　うわっ！！
「びんかんですね」
　何が！つかこらっ！お前、そこ舐めるな！正気にもど
「んっ、んんっ」
　


　はあ、はっ
　駄目だ、これ、まじで腰が砕け、
「とどめ、いきますわね」
　ん？
　あ！

　やめろ！ちょっと、妹にそんな




「いっぱい、でましたね」
　はあ、はあ、こいつ、いつもあいつとこんなことしてんのか？うますぎるだろ。　
「あいつ？わたしのご主人様はあなたさまただひとりでございますが」

　




　よし！ひらめいた！！
　おい、雪奈。
「はい、御主人様」
　お前、何でも俺の言うこと、聞くんだな？
「ご主人様のご命令は絶対ですから」
　よし、よーし。

　ん、ちょっと……

　えー、えへん！！

　じゃあ、雪奈、いまからお前は、このディスクを聞く前のお前に戻る。元の雪奈に戻るんだ。
「もとのわたし」
だが。よく聞け、よっく聞けよ。俺が、チキンラーメン炒め物といったら、お前はまた、今の雪奈に戻る。
「ちきんらーめんいためもの」
　ああ、うまくいくか？これ。









「ん？兄貴？」
　ああ、気が付いたか。
「なんだか頭がほーっとしちゃって、ていうか、ん、口の中がへん？」
　牛乳ですすげば？


「変な気分なんだよね。何だか」
　あっ。そう？
「あたらしくさ、生まれ変わったって、いうかさ。なんだか」
　チキンラーメン炒め物。
「え？あ」





「御主人様、およびですか」
　
　ははは、お前、やっぱ単純だわ。

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なんだろう、息を抜き過ぎた結果がこれ、ってやつなのかも。
内容としては普通のＭＣ物ですね。長編制作の副産物です。

一応、悪堕ちの他、ＭＣ小説もやってるよってことが言いたかった（笑）