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森毅さん死去:「ええんちゃうの」飄々と

「おふくろは楽しい人やったね」と話す森毅さん=大阪府枚方市で2007年8月12日、大橋公一撮影
「おふくろは楽しい人やったね」と話す森毅さん=大阪府枚方市で2007年8月12日、大橋公一撮影

 24日に亡くなった京都大名誉教授で評論家の森毅さんは、さまざまな時事問題への機知に富んだコメントで親しまれた。切れ味の良さから、京大時代は「一刀斎」の愛称で人気を集めた名物教授。評論活動では「ええんちゃうの」を決めゼリフに、世の中がヒートアップする出来事にも飄々(ひょうひょう)と応じた。家族によると、昨年の大やけど以降はほとんど寝たきりだったが、6月の菅直人首相誕生には「へえー」と感嘆の声。この短い言葉が最後の「評論」となった。

 京大で物理学を学んだ父、宝塚歌劇ファンで文学少女だった母との間に生まれた一人っ子。大阪府で過ごした少年時代、両親の本を読みあさり、シェークスピアはほとんど読破した。北野中学(現府立北野高校)での成績は「中の上ぐらい」。豊中市内のジャズ喫茶で、目上の旧制高校生らと文学や哲学を語り合い、幅広い評論の素地を養った。

 京大教養部教授時代は学生に人気で、教室にあまり多く詰めかけるため、初講義で「単位はあげるから、もう次から来んでええ」と言い放った逸話も。

 コメンテーターとしての活動は91年の退官後、ますます活発になった。何かのたびに、マスコミがコメントを依頼。通常は談話を標準語で載せる新聞も、森さんに限っては話した通り関西弁で掲載する慣行まで生んだ。

 得意の「ええんちゃうの」精神は随所でさく裂。05年の郵政選挙の時には「何十年か後に『昔は郵便局っていうのがあったんやなあ』と懐かしがったらええ」と発言。プロ野球近鉄とオリックスの合併騒動で1リーグ化が現実味を帯びた04年、「プロ野球界の終わりだ」「経営の論理だけで動くな」と危機感もあらわな発言の中、森さんは「2リーグ制と言っても元々セリーグ偏重。1リーグ制はしゃあないんちゃうか」と率直な物言いで共感を呼んだ。

 「何かを考えるのが好き。嫌いなものも少ない」。旺盛な好奇心は晩年まで衰えなかった。

毎日新聞 2010年7月25日 21時08分(最終更新 7月25日 21時21分)

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