2006-09-13 15:28:05

泥水ワイン、その後の後

テーマ:ジュブレ・シャンベルタン
前の記事からの続き。
2度目の報告書には、現地のクルチエを通じて寄せられた生産者情報が記載されていた。
以下、原文のまま。

当該商品「グリオット シャンベルタン 1998 ドメーヌ ルネ ルクレール」の製法に関しての
情報は以下のとおりです。

1)醸造タンク    50hlの琺瑯(ほうろう)タンクを使用
2)エグラパージュ(除梗) 90%
3)低温醸し     8日間、10℃
4)発酵      15日間、32℃
5)ピシャージュ(櫂入れ) 15日間、1日2回
6)樽      オーク樽100%、うち新樽20~30%
7)エルヴァージュ(樽熟成) 18ヶ月
8)スティラージュ(滓引き) 3回
9)コラージュ(清澄)  無し
10)亜硫酸添加  2回(マロラクティック発酵後、瓶詰前)
11)濾過     無し

ブロゴーニュの生産者の特徴でもありますが、葡萄そのものの良さを引き出すため、
極力醸造工程において人間の手を加えない製法を当ドメーヌでも採用しています。

上記の製法で特徴的なものはワインの清澄と濾過をしていないことと、添加されている亜硫酸の量
が最小限に押さえられていることと言えます。

清澄していないことによりワインは通常でも混濁している場合があり、濾過をしていないことから
滓の量は多くなるものと思われます。この状態はこのワインの特徴とも言えるもので、決して
品質が劣化しているわけではないことをご理解いただければ幸いです。

しかしながら、今回の当該品は明らかに酸化が進んでいましたので、前回ご報告させていただき
ましたとおり、輸送・保管状況、またコルクに異常がなかったことを考え合わせますと、
酸化の主原因はやはり酸化防止の機能を果たす亜硫酸の添加量が少なかったことが
主原因と考えられます。

この報告書には、フランス人のクルチエ(氏名記載)による仏語による書類と、その邦訳した書類が
添えられていた。一部抜粋して転記する。

今回グリオット・シャンベルタン1998年で発生いたしました件につきまして深くお詫び申し上げます。
ドメーヌ ルネ ルクレールが素晴らしいワインをつくるために最善を尽くしていることを
ご理解下さい。・・・中略・・・
上記のような製造工程からルネ ルクレールのワインに澱が見られることがあることをご理解
いただければ幸甚です。同氏はワインの自然な要素を重視するワイン作りを行っています。
しかしながらこのような低いレベルのSO2添加がワインの酸化リスクを高めるということも
言わざるを得ません。・・・後略。

さて、上記の報告書を2通受け取ったあと、差出人のファインズの取締役管理本部長の
T氏に、先日電話をしてみた。
このボトルと、もう1本未開栓のボトルを、同等品で補償する、との旨のお答えをいただいた。

少なくとも1本目のボトルに関し補償を求めることには、わたしは何ら心痛を感じない。
今でも金を返して当然と思っている。
しかし、未開栓の1本は、開けてみての状態を報告してから、不良であればまとめて
補償下さい、とT氏に伝えておいた。

現在までの、わたしからのクレームに対する応対は以上のごとくである。
1万円もするとはいえ、たった1本のワインに関してのクレームに、
たいへん丁寧に対応をしている、と言っていいだろうと思う。この点は深謝したい。

電話でT氏にお話ししたが、わたしがクレームをつけた最大の目的は、単に補償を求めることではなく、
「おたくが入れたワインには、こんなものが混じっていましたよ」
という情報提供をすることにある。
開栓した消費者からの情報がなければ、インポーターも知らずに済んでしまう。

わたしのようなブルゴーニュ飲みは、猜疑心の固まりのようになっている。
生産者がまっとうな人物ばかりとは限らないのではないか、
クルチエ(仲買人)にもあやしげな人物がいて、日本市場をなめて故意に不良ワインも混ぜて
販売しているのではないか、など、つい勘ぐってしまうのである。

良い例えではないが、ネットや電話で買えるバイアグラは、95%が偽物だそうである。
敵もさるもので、10錠のうち、3錠くらいは本物を混ぜて販売しているケースがあるらしい。
そうすればだまされている方も気づかず、リピーターになりやすい。

長くなるので、また続く。

コメント

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1 ■おー♪

ふむふむ・・・ほほぉー、へぇー・・・

まだ続くようですのでコメントは差し控えます(笑)

2 ■SO2のせいなんでしょうか?

むむ。私個人としてはこの丁寧な対応に感服する一方で、なにやら割り切れない違和感を感じます。 なにやらこの回答では畑も生産者も素晴らしいけど、酸化防止剤が足らなかったからダメになった。自然で伝統的なアプローチの上での失敗だから許してください。なんて風ですが・・・。

じゃあ(醸造時?)亜硫酸入れてないシャソルネイとかどうなるんですか?って感じです。たまに白ワインで酸化したやつに出会いますが、間違いなく酸化してるとはいえワインとしての魅力があるわけで今回のようなどろどろにはならないじゃないですか。少なくとも飲めるワインではあるわけです(これは主観ですが・・・)。

個人的には、問題の本質は他にある気がしてなりません。もし仮に亜硫酸の添加量の問題であるならば市中に出回っているこのグリオットは全てこれに近い状態ってことになりませんか?ルネ・ルクレールのこのキュヴェは決して生産量が多くありません。何十樽もの中から瓶詰めされたわけではないのですから、同様の状態のボトルが多くあるはずで、そもそも生産者もさすがに瓶詰め前や出荷前に飲んでいるはずですし、現在であってもいくらかは手元に残しているはずです。この話でいくとそれら全てもダメだったって話になりませんでしょうか?

残念ながら万全の状態で保管していても中にはだめな奴が混ざるのがワインの常です。それを防ぐためにワインの均質化や安定化の現代醸造技術が発達したわけですから・・・伝統的なブルゴーニュワインなどは「失う喜びもあれば得る喜びもある」ってのが本質のような気がします。

だから私はオフVTも楽しめるグロ・フレールもよしとしますし、喜びもあれば落胆もある生産者のワインも享受するわけです。

そもそも、ピエール・ボージェなんて酸化のかたまりなんですけど・・・

3 ■おお~大家のお二人が・・・

早速読んでいただいてありがとうございます。
実は、いま明日のプレゼンの準備で、Keynoteと格闘中で(ワイン飲みながら)、続きを書く時間がありません。

digiengelさんに、こんなに詳しいコメントを頂いてしまうと、明日書くことがなくなるじゃないですか。
鋭い!その通りです。
ここに引用した報告書は、臭いものに蓋をした、ただのお茶濁しでしかありません。

わたしには未開栓の1本があります。
さっき確認したら、これにはほとんど澱がないようです。
これを開栓したあと、反論に挑みます。

猜疑心の固まりの大阪弁のブルゴーニュ飲みは、懇切丁寧な対応と、うわべだけの言い逃れでは
ごまかせないということを、ちゃんと指摘したいと思います。

4 ■どうなんだろ?

詳細なレポート、ありがとうございます。興味深く拝見させていただきました。

私もdigiengelのコメント・・「問題の本質は他にある気がしてなりません。もし仮に亜硫酸の添加量の問題であるならば市中に出回っているこのグリオットは全てこれに近い状態ってことになりませんか?」という点に同感です。

単に亜硫酸添加量の抑制に問題が在ったと言うよりも、ビン詰めの限界、たるの中のおりまで混入したボトルが混じった、と考える方が適切かなと推測しています。

続きのレポート、楽しみにしております。

5 ■コメントありがとうございます

今回の顛末で、最もがっかりしたのが、臭いものに蓋をする、というインポーターの姿勢でした。
わたしは医療関係者ですので、一般の方からの情報公開要求の厳しさに直面しています。
それを他の業界にまで要求するわけではありませんが、やっぱりちゃんと事実が知りたいんですね。
1本くらい、ちょいとミスしたワインがあっても、他のボトルが良くできているならいいじゃないですか、
という姿勢で接してくれればいいものを・・・
ごまかそうとしている、と受け取られる報告書を出すくらいなら、
わかりません、すみません、という態度の方がまだましだ、と思いました。

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