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◆共通番号制度って何?
なるほドリ 政府が国民全員に番号を付けるそうだね。
記者 国民一人一人に違った番号を割り当てて、税金の徴収や、年金や介護などの社会保障サービスの提供などに活用する「共通番号制度」のことですね。導入の理由について政府は「所得をより正確に把握するため」と説明しています。
Q 番号を付けるとなぜ所得を正しく把握できるの?
A 現行制度では正しく申告している証拠として、企業や金融機関からの給与や年金、株式の配当などの支払いに関する資料を、納税者が勤める企業などが税務署に提出しています。しかし、納められた税金とすべて照合するのは、不可能です。給与などの支払い資料に共通番号を付ければ、コンピューターの検索機能で個人ごとの情報を素早く集約でき、申告額と証拠資料の突き合わせも簡単になります。所得の正確な把握は、徴税だけでなく「低所得者への手厚い支援」など社会保障の充実にも役立ちます。
Q 不公平が解消される?
A 会社員が勤め先以外からもらうアルバイト代や利子所得の捕捉に効果があるとされています。でも、限界もあります。例えば小売店などの所得を把握する場合、お客さんは(1)モノを買うたびに店から番号の告知を受け(2)購入額、日時などの情報を税務署に提出しなくてはなりません。現実的ではないですよね。会社員と比べて、自営業者や農家の所得の捕捉率が低いとされる「クロヨン」問題などの不公平が番号制ですべて解決するわけではないのです。
Q 欧米諸国では普及しているそうだけど、日本にはないね。
A 個人情報を国が管理することへの国民の反発が壁になっています。番号制度のミニ版として政府は80年、郵便貯金などの非課税枠(マル優)利用者を対象に、番号を記した本人確認用のカードを交付する「グリーンカード制度」の導入を決めました。仮名口座によるマル優悪用を防ぐのが狙いです。でも、規制を嫌った富裕層の預貯金が引き出され、海外などに流れたことから、郵政族議員や金融機関が猛反対、実施されないまま85年に廃止されました。02年から始まった住基ネットも、名前、生年月日、性別、住所、住民票コードが記録されているだけなのに「情報流出の危険性がある」として、一部の自治体が参加していません。導入にあたっては、プライバシー侵害への国民の不安が根強いことを踏まえた議論が不可欠です。(経済部)
■番号制度を巡る主な動き
80年 少額貯蓄非課税制度悪用防止の「グリーンカード」法制化。実施されず85年に廃止
02年 住民基本台帳ネットワーク稼働
07年 安倍内閣が「社会保障番号制度」提唱
09年 10年度税制改正大綱で1年以内に結論を出す方針を明記
10年6月 複数の選択肢を発表
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毎日新聞 2010年6月30日 東京朝刊