3月26日に起きた韓国海軍の哨戒艦沈没事件をめぐって、米国が北朝鮮への圧力を一段と強めている。
米韓両国は韓国で外務・国防担当閣僚会議(2プラス2)を開いた。クリントン国務長官とゲーツ国防長官がそろってソウルを訪問し、共同声明を発表することによって韓国防衛の意思を鮮明に打ち出した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)では、クリントン国務長官が「北朝鮮は国際法に従い、行動を根本的に改めなければならない」と非難した。北朝鮮指導部の資産凍結を柱とした追加経済制裁も打ち出した。
25日から韓国東方の日本海で始まった米韓合同演習は、強大な軍事力を誇示して北朝鮮の新たな武力挑発を思いとどまらせるのがねらいである。4日間の演習期間中、両軍合わせて約8000人が参加。原子力空母ジョージ・ワシントンやイージス艦など約20隻の艦船と、最新鋭ステルス戦闘機F22など約200機の航空機を投入する。
哨戒艦沈没事件から4カ月。韓国側が「北朝鮮による魚雷攻撃」と結論づけているのに対し、北朝鮮側は事件との関与を一貫して否定し続けている。
解決の糸口が見いだせないまま、軍事的な緊張だけがエスカレートするという事態は、避けなければならない。北朝鮮を対話の方向へ導く戦略もなしに、軍事的圧力を加えるだけの外交では、緊張緩和につなげていくのは難しいのではないか。
米韓合同演習をめぐって、関係国の複雑な事情も露呈した。
当初、演習は中国近海の黄海で実施する予定だった。中国が自国近海での外国軍の演習に強く反発したため、6月予定の演習は延期され、米韓両軍は演習実施海域の変更を余儀なくされた。米韓と中国の足並みはそろっていない。
ASEAN地域フォーラムで岡田克也外相は「北朝鮮の行為は平和と安全に対する脅威だ」と述べ、日米韓の連携を前面に押し出した。
米韓合同演習には今回初めて、自衛隊が海上自衛官4人をオブザーバーとして派遣し、原子力空母ジョージ・ワシントンに同乗させる。
北朝鮮に対する日米韓の結束を示すねらいがあるが、韓国側が自衛官参加にもろ手を挙げて賛成したわけではない。当初、軍事情報の流出を警戒する声が強かったという。
米軍が新たな演習実施海域を「東海」と呼ばず「日本海」と表現したため、韓国から「配慮が足りない」と批判する声も上がった。
北朝鮮は、米韓日3カ国と中国の間に横たわる溝を自国に有利なように利用するだろう。米韓日3カ国の結束を揺さぶる外交攻勢を仕掛けてくることも考えられる。米韓中日4カ国が足並みをそろえないと問題解決は難しい。4カ国の結束が重要だ。
北朝鮮は現在、金正日総書記の後継体制づくりが進んでおり、権力移行期であることを念頭に北朝鮮の出方を慎重に見極める必要がある。