オペラの芸術団体でつくる日本オペラ連盟(五十嵐喜芳理事長)が、人材育成のための舞台公演などに対する国の支援金6273万円を不適切に受け取っていたと文化庁が26日、発表した。経費の水増しなど「非常に悪質な不正行為があった」と文化庁はみて、同連盟の事業への支援を今後5年間、凍結することにした。
文化庁と同連盟によると、同庁会計課係長などを務めた元文部官僚が同連盟の常務理事兼事務局長(現在は退職)として、支援金の申請事務を担当していた。同庁は全額の返還を同連盟に請求。刑事告発については警察当局と相談した上で「詐欺罪の立件は難しい」として、当面は見送る方針だ。
同連盟が不適切に受給していたのは、2004年度から08年度までの12事業。文化庁が事業費の全額や半額などを支援する仕組みだった。ところが同連盟は、事業費を多くみせるために、公演の会場費を4倍に、ソリストや指揮者らへの出演料を2倍近くに水増しするなどしていた。また、本来は請求できない、日常業務を担うアルバイト職員の人件費や事務所の電話代なども、公演の「調整経費」として請求していた。受給に際しては収支計算書のみで、今は義務づけられている帳簿の提出も不要だった。
同連盟は08年6月に、監事から「経理上の疑い」を指摘されたが、内部調査をせずに放置。会計検査院の昨年12月の実地検査を受けて、今年1月に外部調査委員会を設けて本格的に調べ始めた。
同連盟は二期会、日本オペラ振興会(藤原歌劇団、日本オペラ協会)など7団体の正会員などで構成。中村健副理事長は会見で「不正経理を働いたのは事務局長ひとり。ただし、着服はない。オペラには莫大(ばくだい)な金がかかる。水増しした分をすべてつぎ込んでもなお赤字」と話した。