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金曜日から

金曜日から(10/18発売432号)

▼今週の「映画」で紹介している『home』、私も観ました。重く心に残ったものをう
まく言葉にできないでいたので、感想を求められ「血抜きしてないレバーみたいな映画」と即答した石塚ともさんには脱帽、という感じです。「引きこもってもいいじゃないか。ちょっと遠回りするだけだよ」という映画のコピーもいい。思えば、私にもそんな時期があったなあ。中学生の頃、いつも自分の部屋に鍵をかける私と、「開けておけ」という父とで日々“格闘”してました(ちょっと大げさですが)。
鍵をかけた部屋で何をしていたかは思い出せません。でも、ただでさえ不安定でしんどかったその頃、もし「1人で引きこもる時間」が持てなければ、乗り切れてなかったので
は、と思うことがあります。(小長光哲郎)
▼通勤途中、東京ドームのある遊園地の中を通る。改修中の遊園地の一角にできあがりつ
つある建物を見ると、ため息が出る。来春完成予定の「ラクーア」という温泉施設だ。「天然温泉」と銘打っているが原泉がどれだけ使われるのだろうか。地面を掘って湯気が出れば、それだけで「温泉」といえるほど「温泉」の定義は甘いという。それに水道代と掃除の手間賃の節約のために、循環風呂というシステムを導入するに違いない。使い回したお湯の消毒のために塩素をどっさり入れたお風呂で、「リフレッシュ」もないだろう。かくいう私も松田忠徳さんの『温泉教授の温泉ゼミナール』(光文社)を読むまでは、塩素のたちこめる湯船に浸かって「生き返るなあ」なんていっていた口なのだが。(小林和子)
▼猛暑と言うより異常気象と言ってよい夏が終るとともに、私の回りで訃報が相次いでい
る。統計はずっと後にしか示されないが、私の回りだけでなく相当な数の人がこの時期に世を去ったという結果が後に出るのではないか。傍証は各地で斎場がウェイテング・リストを抱えていることである。例年、季節の変り目に起きることとは言え異常な気がする。高齢や病気だった人の生命力では力が尽きてしまうほどの異常気象が“最後の引き金”の
役割を演じているように思えてならない。立て続けに接した訃報の5人目が和田俊氏だっ
た。「ニュース・ステーション」での穏やかでバランスのとれたコメンテーターぶりを記憶の方も多いと思うが、私とは本多勝一氏とともに、朝日新聞社での同期生。この期は入社試験に常識問題がなかったことと掛けて「常識なしの34年組」と社内で呼ばれていたが、和田君はなかでぬきんでて教養豊かな人だったし、少年の面影がいつまでも抜けない若々しい人だった。外国特派員仲間として思い出も多い。年齢では1歳年下の友人の死はこ
たえる。(筑紫哲也)
▼経済コラムをお願いしている木村剛さんは、不良債権の本格処理なしに経済の活性化は
ありえない、という正論をはき続けている若き論客です。昨年9月に小泉純一郎首相の面
前で、当時の森昭治金融庁長官と激しくやり合ったことのある行動派でもあります。「日本企業を米国の投資会社に売ってしまう手先」と非難する向きもありますが、月に一度の勉強会でずっと付き合っている私からみれば、とんだ見当違い。日本を良くしたい一心で改革を訴えている人だと思います。
その木村さんが金融庁のプロジェクトチームに入ったとたんに株価の下落に拍車がかかり、いまや大変な「悪役」にされてしまった。よい機会なので、最近の考え方を緊急に書いてもらいました。本当に悪いのはだれなのか、知る手がかりになります。(岡田幹治)
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