自民党の岩永浩美・参院議員(68)(佐賀選挙区)が、自ら役員を務める有線音楽放送会社「キャンシステム」(東京都杉並区)の監督官庁である総務省側に対し、同社を含む業界の違法行為がなくならない実情を擁護したり、ライバル関係にある社を批判したりする発言をしていたことが、総務省側の調査などで分かった。同氏が代表者を務める自民党支部は、キャンシステムから2006〜08年に総額500万円の献金を受けていた。
総務省によると、有線音楽放送業界では1970年代からケーブルを勝手に電柱に取り付ける違法行為が横行。業界首位の大阪有線放送社(現・USEN)は00年3月までに違法状態を解消したが、業界2位のキャンシステムは今も正常化できていない。
政権交代後の今年3月、原口一博総務相(衆院佐賀1区)の指示で、総務省が「有線音楽放送事業の正常化に関する検討チーム」を設置。正常化の遅れの経緯を調査した。その調査報告書(6月1日公表)では、「キャンシステムの取締役でもある国会議員」が総務省の担当官に接触し、「大阪有線放送社の正常化の検証を求めるなどの働きかけ」や「大阪有線放送社の過去の違法な事業拡張に照らし、キャンシステムをはじめとする全国有線音楽放送協会に所属する事業者が正常化できていないことについて擁護する発言」をしたと記載。ただし、「これが具体的に行政の判断などに影響が及んだといえる証拠はなかった」とした。同省によると、働きかけは97年から昨年7月にかけて断続的にあったという。
報告書に記載された「国会議員」は、キャンシステム取締役中ただ1人の国会議員である岩永氏。同社などで作る全国有線音楽放送協会の理事長も務めている。