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【社会】

『中国実習生は過労死』 長時間労働 労災初認定へ

2010年7月3日 朝刊

 日本の技術を学ぶために外国人研修・技能実習制度で来日し、技能実習生として金属加工会社「フジ電化工業」(茨城県潮来市潮来)で働いていた中国籍の蒋暁東(ジャンシャオトン)さん=当時(31)=が二〇〇八年に死亡したことについて、鹿嶋労働基準監督署は違法な長時間労働による「過労死」と判断し、労災認定することを決めた。遺族側の代理人弁護士によると、外国人実習生が過労死で労災認定されるのは初めて。 

 鹿嶋労基署によると、蒋さんは〇五年十二月に来日し、技能実習生としてメッキ処理工場で勤務。〇八年六月六日に心不全のため、社員寮で死亡した。同年五月の残業時間は百時間を超えていた。遺族側が昨年八月に労災申請していた。

 遺族側代理人によると、来日二年目からは月百五十時間の残業が常態化し、〇七年には百八十時間残業し、休みが二日だけの月もあった。

 労基署の調べで、同社が勤務時間を実際より短く記録したタイムカードや賃金台帳を作成し、実際の残業時間などを記載した書類を破棄していたことが判明。労基署は二日、長時間労働や残業代の不払いがあったとして、労働基準法違反の疑いで、同社と男性社長(66)を水戸地検土浦支部へ書類送検した。

 取材に対し、社長は「忙しい部署なので、(蒋さんに)ほかの実習生と交代制にすると助言したら『一人でやる。もっと働かせてくれ』と言った。亡くなる前月の健康診断でも体調に異常はなかった」と説明している。

◆外国人研修制度 不正、後絶たず

 最低賃金以下の時給で長時間労働をさせるなど不正行為が相次ぐ現状に、専門家らは今回のケースを「氷山の一角」と指摘する。「実習に名を借りた就労」ともいわれる制度の廃止も含めた抜本的見直しを訴えている。

 法務省などによると、外国人研修・技能実習制度をめぐっては昨年、三百六十の企業・団体で不正行為を認定。前年より約二割減ったが、高止まり状態が続く。最低賃金不払いや暴力などの不正行為が延べ四百四十四件あった。二〇〇八年度に作業中の事故や病気で死亡した実習生らは三十四人に上った。

 相次ぐ不正行為を受け今月一日に改正入管難民法が施行され労働関係法令の適用範囲が広がった。受け入れ団体や企業の不正行為への罰則も強化された。

 しかし外国人研修生問題弁護士連絡会は「本質的解決にならない」と批判する。

 制度に詳しい指宿昭一弁護士は「今回はたまたま遺族が申請にたどり着き、認定まで至った。実習生らを入国させるなら十分に権利が保護されるシステムを構築してからにすべきだ」と話している。

 

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