CSのチェンネル銀河で、中国ドラマ「楊貴妃」が放送されています。
今夜、最終回を迎えるのですが、主役のファン・ビンビンの美しさだけでも見る価値ありです。
http://www.ch-ginga.jp/special/yokihi.html
一部オリジナルな設定はあるものの、ドラマの大筋としては、ほぼ定説に添っており、特に目新しい解釈もありませんが、オーソドックスな主人公を本当に美しくオーソドックスに描いた佳作です。
この楊貴妃は、特別悪女でもなく、かといって聖母の如き善良な女でもない、普通に賢くて、普通に優しくて、政治には全く興味のない普通の女です。
この時代の常として、権力者の意向により、自らに意思に反して結婚させられ、後に皇帝の妃となりますが、その中でも次第に自分を深く愛する皇帝へ、信頼を寄せるようになります。
この楊貴妃は、政治的なことには全く口を出さないのですが、大勢の息子達を皇太子に冊立しては廃立を繰り返す玄宗に、現皇太子廃立を思い留まらせたりしています。
理由は、「弟思いのいい兄だから、良い世継ぎになるでしょう」という非常に情緒的なものでしたが、玄宗はそれを聞き入れ、結果的にそれは唐王朝にとってはよかったことになります。
また、後に叛逆する安禄山が後宮で、楊貴妃や女官達を相手に珍しい辺境地域の話しをする場面があるのですが、契丹の女王が、嫁いだ前王の公主(王女)まで殺したという話しを聞いた途端、「なにも公主達まで殺さなくとも・・・」と言って、顔も見たこともない異民族の女性達に深く同情し、涙を抑えるシーンがあります。
玄宗が、ある将軍を処刑すると言う時に、その家族まで一緒に殺そうとするところを「女や子供達まで殺すことはない」と反対してもいます。
終盤で、起死回生を狙い親征に出ようとする老皇帝を必至に説得し、思い留まらせる場面も印象的でした。
私は、この楊貴妃がかなり好きです。
彼女は確かに、男性の権力に従う唐代女性の枠を一歩も出ない存在で、政治戦略的な見識とも知略とも無縁な女性ですが、普通の女性特有の慈愛の心を持っている魅力的な人です。
田中芳樹氏は、中国が好きで、楊家将演義を翻訳してリメイクするという話を聞きましたが、もし、機会があれば田中氏的解釈の楊貴妃もぜひ読んでみたいです。
多分、キング・コングの時のように、「ただ周囲に流されるだけの弱い女では魅力がない」などと言って、楊玉環が最初から物凄い野心家でで、皇帝に対して、宰相や文武の重鎮達顔負けの智謀を披露して、積極的に「傾国」に参加したりするのではないか?などと妄想してましいます。
勿論、女子供が連座させられても、心は動かずむしろ、自分は勝者だからこそ、そのような目には遭わないのだと傲慢に言い放つかもしれません。
そして、その私的基準では、冷酷で自分勝手な楊貴妃が、田中版では、「時代を先取りした強い女」ということになるんだろうなぁ・・・などどまた妄想を広げてしまいます。