朝日新聞に送られた手紙。裁判員裁判の印象などがつづられている
懲役16年の判決が確定した殺人事件の6日前に同様の事件を起こしていたとして殺人と死体遺棄の罪に問われ、熊本地裁の裁判員裁判で7月1日に懲役23年(求刑無期懲役)の判決を言い渡された男(30)=16日に確定=が、朝日新聞の取材に手紙で応じた。「私が裁判員の立場ならば、判決は無期懲役」と複雑な心境がつづられていた。
男は2006年7月20日、熊本市内の女性(当時25)の首を両手で絞めて殺害し、遺体を同市植木町の雑木林に遺棄した。男はこの事件の6日後、別の女性(当時24)の首を絞めて殺害し、遺体を遺棄したとして懲役16年の判決。服役中に今回の事件が発覚し、裁判員裁判となった。
記者は公判前から数回にわたり、裁判員裁判の印象などについて話を聞きたいと男が拘置されていた京町拘置支所(熊本市)に手紙で取材を申し込んだ。判決後、男から「受刑中の身でもあり面会はできないが、手紙で取材の答えにさせていただきます」との返事がきて、便箋(びんせん)6枚に判決後の心境などが書かれていた。
裁判員裁判の公判では、ほぼ同時期に起きた事件ですでに確定した判決が裁判員らの量刑にどのような影響を与えるかが注目された。「法律上も国民の健全な常識という観点からも量刑の事情として確定した事件を考慮することは許される」と主張した検察側に対し、弁護側は「量刑を重くする方向で確定判決を考慮することは憲法で禁じられた二重処罰にあたる」と反論していた。
この点について男は「検事が冒頭から確定した事件に触れていて驚いた。まるで二重処罰しろと言わんばかり。結果、事件そのものよりも量刑に注目が集まった」。一方、判決内容に関しては「ご遺族の心情を考えると複雑」としつつ、「私が被告人の立場ではなく裁判員だったら、判決は無期懲役。逃げ得は許されない」と書いていた。確定した事件の裁判では、今回の事件を隠したままで心の中にしこりが残っていたという。