【ハノイ=牧野愛博】韓国とベトナムの関係が国際結婚問題を巡って揺れている。発端は、8日に韓国・釜山で起きた「ベトナム人花嫁」の殺害事件。ベトナムでは政府やメディアが強い関心を示しており、柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相が23日にハノイでベトナムのズン首相に再発防止に努力する考えを伝えるなど、韓国政府は対応に追われている。
韓国警察当局によると、韓国人の男(47)が8日朝、釜山市内の自宅でベトナム人の妻(20)を殺害した。男は精神的に不安定で「妻を殺せという幻聴が聞こえた」と話しているという。2人は今年1月に業者を通じて結婚し、妻は今月1日に韓国に到着したばかりだった。
ベトナムのメディアは事件を、結婚式当時の2人の写真と一緒に大きく報道。ベトナム外務省報道官は15日、「事件にショックを受けている」と発言し、韓国側に調査と対応策を求めたことを明らかにした。
ベトナム側が大きな関心を寄せる背景には、韓国で頻発する国際結婚を巡るトラブルがある。韓国では近年、農村部が抱える「嫁不足」の問題から国際結婚が急増。2003年に約4万4千人だった外国人配偶者は、今年5月時点で約13万6千人に急増、このうち外国人妻は約12万人を占める。経済的な事情からベトナム出身者が多く、韓国人と結婚したベトナム人女性は約3万2千人と全体の4分の1を占める。
ただ、十分な意思疎通のないまま結婚をあっせんする仲介業者も多い。韓国政府機関の移住女性緊急支援センターによると、ベトナム人妻から「韓国人男性が一方的に配偶者を選んだ」「暴力をふるわれた」といった相談が絶えない。昨年の相談件数は1万4千件を超え、3年前の40倍以上に達している。
問題はベトナムだけにとどまらず、カンボジアでも政府が3月、一時的に韓国人との国際結婚を禁じた。