2010年7月23日(金) 東奥日報 特集

断面2010

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■ 愛子さま不登校問題/「良い兆候」も展望見えず

 皇太子家の長女愛子さまは、雅子さまに付き添われて一部授業だけに出席する時限登校を続け、学習院初等科3年の1学期を終えた。宮内庁が「複数の乱暴な振る舞いの男児がいて通学に不安を覚えている」と公表してから4カ月。最近は愛子さまが同級生と楽しく過ごす「良い兆候」(宮内庁)が増えた。だが天皇、皇后両陛下が憂慮を示した“不登校”は解決への展望が見えず夏休みに。雅子さまの療養も続き、宮内庁は二重苦に頭を抱えている。

 ▽安堵

 学期末を控えた20日。東京都新宿区の学習院初等科の体育館では、愛子さまが笑顔で、クラス対抗のドッジボールに興じた。この日は皇太子さまも雅子さまとともに参観。2人は穏やかな表情で見守ったという。

 「以前に比べたら格段に良い状況になっている」。3年生になってからほかの3クラスの児童と交流する機会がほとんどなかっただけに、皇太子家のお世話をする宮内庁東宮職幹部も学習院側も安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 ただ通常の通学には程遠い。午前10時すぎに雅子さまとともに登校し、教室の後ろで雅子さまが控える中、午前中の2時限の授業を受け給食を食べずに下校する。写生大会や泊まりがけの校外学習は欠席し「不登校に近い状態」(東宮職幹部)に変わりはない。

 「一日も早く普通に通ってほしい」「どうして最初からいないのかな」。同級生の同情の声はやまないという。

 ▽義務

 2003年末から療養が続く雅子さまは「授業をずっと見るのは大変で疲れがたまっている」(東宮職関係者)。なぜ、同行を続けるのか。「一緒でないと登校できない」と訴える愛子さま。雅子さまは付き添いについて「学校が大好きな娘を守るために母としての義務と考えている」(同)からだ。

 こうした状況が雅子さまの公務への本格復帰に影を落としている。宿泊を伴う公務での地方訪問は今年1月の阪神大震災15年の追悼式典に足を運んで以降、途絶えたまま。一昨年、昨年と出席した皇居での国賓歓迎行事も今年5月のカンボジア国王の際は欠席した。

 ▽平行線

 東宮職と学習院は定期的に意見交換を継続中だ。雅子さまの主治医も大半は出席。1学期末には皇太子ご夫妻も加わり、東宮御所での自習や夏休みの過ごし方などが話し合われた。「多くの人と触れ合えば、通学にも良い影響が出るはず」(東宮職)と、夏休みは外出や友人を呼ぶ機会を増やす予定だ。

 ただ、東宮職と学習院との擦れ違いは続く。東宮職側は「怖い思いをして不登校になった事実がある以上、学校としてもっと真剣に努力してほしい」と要請。学習院側は「いまさら犯人捜しのようなことはできない。集団の中での人間教育は大切。事情はあるにせよ、普通のパターンで登校してほしい」と主張し、平行線のままだ。

 「いずれかが犠牲になる形で解決が図られることのないよう十分に配慮することが必要」と異例の談話を3月に出した天皇、皇后両陛下。側近によると、心痛は今も続いているという。

(共同通信社)




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