京都府雇用対策、中小企業を「圧迫」
観光レンタサイクル事業重複
京都府が緊急雇用対策の「提案型事業」として大手旅行会社に委託した観光レンタサイクル事業が、「既存の振り替えでない新規事業」という条件に反し、民間業者の業務と重複していたことが24日、分かった。府は審査の際に市場調査を実施せず、重複を見落としていた。その影響で売り上げが減少した業者が出ており、業界団体は「税金を投入した事業が、われわれ中小企業を圧迫するのはおかしい」と府に強く抗議している。
問題になっているのは、府が2009年度から大手旅行会社の京都支店(京都市中京区)に委託した観光レンタサイクル事業。京都市内のホテルなど4カ所で、電動アシスト付き自転車を貸し出している。府は新規雇用分の人件費だけでなく、自転車のリースや宣伝費など事業の経費を支払い、09年度の委託費は3690万円に上った。10年度も4900万円で契約している。
府は既存業界に配慮し、公募の条件を「民間とすみ分けできる新規事業」とした。だが実際には業者へのヒアリングは行わず、同支店の提案内容を見ただけで「電動アシスト付きで料金も異なり、既存のレンタサイクルとは競合しない」と判断したという。
府自転車軽自動車商協同組合(下京区)によると、今回の提案型事業は従来の観光レンタサイクルと内容の違いはないという。その影響で、有力な取引先のホテルの注文が激減し、年間売り上げの約10%分を失った業者もいる。
同組合は「少しでも調べれば、業界への影響は予測できた。府の怠慢ではないか」として府の対応を批判し、事業委託を打ち切るよう求めている。
府緊急経済・雇用対策課は「現時点で、既存業界に影響を与えたことは認識している」と認めながらも、「委託した事業による雇用が継続しており、委託のストップは考えていない」としている。
■本末転倒だ
同志社大・真山達志教授(行政学)の話 京都府は事業が業界にどのような影響を与えるか配慮し、より慎重に検討すべきだった。新たな雇用の創出という面では若干効果があるかもしれないが、既存業者の仕事が減っては本末転倒ではないか。
≪京都府の提案型事業≫
厳しい雇用情勢への対策として、09年度から3年間実施。企業やNPO法人から新規雇用を生む事業案を公募、選考して業務委託する。麻生政権時の「ふるさと雇用再生特別交付金」が財源。
【 2010年07月25日 11時43分 】