日本振興銀行(本店・東京都千代田区)が不良債権の損失を隠したとされる問題で、判明していた不良債権約211億円分に加え、振興銀が昨年9月、新たに約132億円分も取引先に融資した資金を使って高値で買い取らせ、損失を隠していた疑いがあることが分かった。
朝日新聞が入手した取引先企業のメールなどで、企業への融資を少額に分割したり、企業同士で融資金をまわしたりするなど複雑な仕組みにしていたことも明らかになった。振興銀関係者は「昨年9月は金融庁の検査中だったので、不良債権隠しを把握されないようにしていたのではないか」と指摘している。
振興銀関係者の話や内部資料によると、振興銀が「飛ばし」と呼ばれる手口で新たに隠していた疑いのある不良債権は、商工ローン大手「SFCG」(破産手続き中)から買い取った額面で1千億円超の貸し出し債権の一部の約132億円分。判明していた約211億円分と合わせて総額約343億円分になった。
取引の流れは、(1)振興銀が昨年9月、取引先の「中小企業振興ネットワーク」加盟企業約40社に1億〜3億円ずつ融資(2)この融資金が別の加盟4社にそれぞれ30億円超ずつ集められた後、4社が計約132億円を匿名組合に出資(3)匿名組合は、振興銀の不良債権約132億円分を引き取っていた保証会社から債権を買い取り(4)保証会社は振興銀に約132億円を弁済――というものだ。振興銀の融資は同月中にこの仕組みで銀行に戻ってきた。これにより、不良債権を実際より高値で売却できたとみられ、振興銀は自行の決算から不良債権を切り離し、損失を隠した疑いが持たれている。
一方、この取引に加わった岡山市内の電子機器販売会社に対し、ネットワークの中核企業から送られたメールを朝日新聞が入手。振興銀から融資を受け、それを別のネットワーク加盟企業に貸し付けることを要請する内容が記載されていた。契約書類では、融資目的は会社の「運転資金」となっていたが、実際は別目的に使うことを企業側が承知していたことが裏付けられた。
振興銀経営管理室は「中小企業振興ネットワーク参加企業との取引状況については社内で精査を行っております」としている。(沢伸也)