「ヒロシマ」から核と戦争に反対する思いを込めて
集会、ダイインやピースウォーク |
有事三法からイラク派兵法へと、日本の参戦への動きが急速に強まる中で迎えた五十八回目の原爆祈念の前日の八月五日、「8・6ヒロシマ平和へのつどい2003」が開かれた。今年の集会名称は「有事法制・イラク派兵 日本もつき合うのか『戦争中毒(アメリカ)』」とつけられた。会場は例年通り、爆心地すぐそばの県民文化センターで、参加者はおよそ百五十人だった。
集会の司会は、第九条の会ヒロシマの藤井純子さんが行い、開会のあいさつは原発はごめんだヒロシマ市民の会の木原省治さんが行った。木原さんはあいさつの中で戦争賛美の教科書が広島の中高一貫校で採用されようとしていることにふれ「広島の存在意義が問われる問題だ」と指摘した。
基調的な講演をピースデポ副代表の田巻一彦さんと米バークレイ市環境委員のローレン・モレさんが行った。田巻さんは「日米同盟を、ジュネーブ協定など国際法の下に置くことが必要だ」「憲法を守れでは不十分で、東北アジア非核地帯構想など対抗的なものを提示して攻勢的に闘うことが必要だ」と述べ「有事法制やイラク派兵法が通った後でも、地方自治体を基点に闘うことが必要だし可能だ」と提起した。
ローレン・モレさんは「日本が米英侵略軍に加わるよう求められているいま、日本の平和運動家には大きな責任がある」として、「労組、帰国兵士、運転手、教師など被害を受けるすべての人びとを組織することが必要だ」「9・27に全力を」と訴えた。
その後、郭文鎬さん(在日韓国民主統一連合)、羽熊直之さん(《上関町》長島の自然を守る会副代表)、舟越耿一さん(長崎大学・憲法学)柴田もゆるさん(教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま)からそれぞれ発言があった。
郭さんは「ブッシュがいまのヒロシマを見れば核は使うべきだというだろう」といい、羽熊さんは、世界中の原発をなくさなければ核兵器はなくならない」とし、舟越さんは「運動がなかなか盛り上がらないが、言いたくはないがネバーギブアップだ」と訴えた。
まとめは、実行委員会代表でピースリンク広島・呉・岩国の世話人でもある湯浅一郎さんが行い「われわれは確かに重大なときにあるが押されてばかりいるわけではない。逆に、大量破壊兵器問題・ウラン購入問題のウソからブッシュやブレアが孤立し、危機に陥っている。日本でも『とわだ』出港のとき家族や兵士がわれわれの訴えに聞き入っていた」と運動の可能性を指摘し、9・27と10・21の国際行動への取り組みを訴えた。集会の最後には「市民による平和宣言」が採択された。
六日と七日、「平和宣言」配布、ダイイン、グランド・ゼロのつどい、中電前座り込みなど多彩な取り組み。
八月六日は早朝から平和公園の正面と二つの橋で、「市民による平和宣言」の配布が行われた。原爆投下の八時十五分には原爆ドーム下でダイ・インが行われ、続いてグランド・ゼロの集会がもたれ、ピースサイクルなど全国からの参加者がそれぞれ思いを語った。
その後、このドーム前から中国電力本店まで、百人あまりのピースウォークが行われ、中電前で九時三十分からは原発反対の座り込みと木原省治さんの司会での集会が行われた。湯浅一郎さん、原子力情報室の伴さん、若狭原発反対ネット、アジアン・スパークなどが発言し、最後に中国電力に原発の断念を求めるシュプレヒコールが行われた。
この後も広島城周辺と宇品・比治山のコースに分かれてのフィールドワークが行われ、七日には広島湾スタディ・クルージングももたれた。(H)
全国戦没者追悼式反対!
東アジアの平和をめざし天皇制の戦争責任を追及
八月十五日、東京・全水道会館で「東アジアの平和をめざし、天皇制の戦争責任を追及する8・15集会」(主催・実行委)が行われ、百五十人が参加した。
この日、政府は、天皇夫妻が出席する全国戦没者追悼式を日本武道館で開いた。アキヒトは、「世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」と述べ、アジア・大平洋民衆に対する侵略・植民地支配に対する謝罪・反省の姿勢すら示さなかった。この態度は、戦争ができる国家作りの一環として「皇室外交」など天皇制の強化を担っていこうとする現れだ。
そして小泉首相は、米ブッシュ政権のグローバル戦争への積極的参画を意識して「国際社会の一員として、世界の恒久平和の確立に積極的に貢献するよう全力をつくす」と宣言した。小泉は、イラク新法制定をステップに自衛隊のイラク派兵を強行して実績を作り、来年の通常国会にも海外派兵のための恒久法の制定をねらっている。さらにこの日は、天皇制を賛美し、侵略戦争を正当化する靖国神社に政府四閣僚、自民党・民主党・自由党の国会議員五十五人、石原都知事などが参拝を強行した。
集会は、このような天皇制の戦争・戦後責任の「清算」と強化を許さず、戦争ができる国家作りに向けた一切の動きに反対する取り組みとして闘われた。
実行委の仲間は、@「八・一五をめぐる状況と慰霊問題」A「反戦運動と結合した反靖国、反追悼施設運動のさらなる強化を」B「天皇・盧武鉉会談と天皇訪韓問題」C「強まるナショナリズムと天皇制の再編」について基調を提起した。
次に問題提起が二人の講師から行われた。
佐藤信行さん(在日韓国人問題研究所)は、「五十八年目の8・15と在日コリアン」というテーマで提起した。冒頭、昨年の9・17日朝首脳会談を取り上げながら、「日朝国交は日本にとって歴史の克服と東アジアの平和にとって重要な課題だ。戦後処理をめぐるw日本国xとして最後の国家間条約だ。しかし、戦後五十七年間も放置してきた」と批判し、日朝国交交渉の重要性を強調した。
さらに、「日本人拉致事件」問題と9・17以降の状況について、「拉致被害者とその子どもたちのw救済xは、日朝交渉の継続による真相究明と謝罪・補償として必ずやなされなければならない。北朝鮮に残されている拉致被害者の子どもたちは、日本と北朝鮮を自由に往来して自分で決定していくことを日本も共和国政府も認めるべきだ」という立場と同時に、「日本の植民地支配」の歴史の無視、正当化される日本「国家主義」や「排外主義」、「在日」へのさまざまな迫害や嫌がらせ、差別発言を批判した。
次に、菱木政晴さん(小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局)は、二〇〇一年八月十三日に小泉首相が内外の反対を無視して「首相として」靖国神社参拝の強行したことに対する、アジアの人々と連帯した、違憲確認・損害賠償・差し止め訴訟の取り組みを報告した。
菱木さんは、「小泉首相の靖国参拝は、日本の侵略戦争の命令責任者と実行部隊の死者に対して、感謝と敬意をささげたものであり、このような行為のあとに続く決意を示すものだ。これはアジア民衆に対する傲慢な挑戦である。そして、特定の宗教w侵略賛美教・国家神道x*国神社に対する国の特権付与、国の宗教活動であり、明確に日本国憲法が禁じている政教分離違反だ」と批判した。さらに、追悼施設賛成派の問題点を指摘し、「反戦運動と結合した反靖国、反追悼施設の運動をさらに強化していこう」と訴えた。
実行委は、抗議声明「私たちはw昭和の日x制定を断じて許さない」の取り組み報告と制定反対を訴えた。続いて発言は、「日の丸・君が代」の強制に反対する市民運動ネットワーク、「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会、昭和天皇記念館阻止団、日韓民衆連帯全国ネットワーク、新しい反安保実、靖国神社をなくそう!8月行動から連帯アピールと取り組み報告がされた。集会終了後、参加者全体でデモに移り、神田から九段下に向かい、靖国神社に対して抗議のデモを行った。(Y)
第10回統一マダンプレ企画
三河島でピースウォーク
韓国シチズン労組の仲間も参加
【東京東部】八月七日、「統一マダンプレ企画」として、「三河島ピースウォーク」が開催された。主催は「第十回統一マダン東京実行委」。午後六時半、東京・荒川区の三河島公園には、仕事を終えた市民・労組員ら約七十人が集まった。東水労青女部の山口さんの司会で集会が始まった。
「浅井基文さんを迎えた『プレ企画』は成功した。第十回統一マダンの成功にむけ最後までがんばろう」。「ノレの会」の尾沢さんの指揮で、韓国の反戦歌をみんなで合唱した。続いて荒川区職労委員長の田口さんが発言。「政府はイラクに自衛隊を派遣しようとしている。まさに暴挙だ。去る三月には、派兵反対の区職労独自集会を雨のなか開催した。イラク問題も朝鮮半島問題も、あくまで平和的手段で解決すべきだ。そして朝鮮半島は平和的に統一されるべきだ。区職労も最後まで精一杯がんばる」と決意表明。
韓青同代表の女性は、「アメリカの私利私欲のなかで、イラク侵略が行われているが、同時に在日に対する差別と偏見も強まっている。私たち侵略された民族の解放は、いまだに行われていない。祖国に対する不当な干渉をやめさせる」。
荒川区労評の仲間の発言の後、「韓国シチズン労組」の仲間が連帯のアピールを発した。韓国では民主労総に加盟しているが、不当解雇撤回を求めて、日本の本社に抗議に来日した。通訳は「私たちの闘いのビデオを作製中です。ぜひ完成したらご覧になってください。東アジアの平和を求める運動を、ぜひ発展させましょう」と、紹介した。
参加者は、キャンドルに火をつけ、いよいよデモに出発。荒川区役所前の明治通りを、宮地のロータリーで左折、三河島駅前商店街から日暮里公園まで、約一時間のキャンドルデモ行進を貫徹した。台風が近づいているのか風が強く、真紅の労組旗が大きくたなびき、「日米の戦争政策NO! 米軍はイラクから出て行け!」「自衛隊はイラクへ行くな! アジア朝鮮半島に平和を!」、シュプレヒコールが、力強く響いていた。(S)
三里塚・横堀で盆踊り
既成事実の積み重ねによる住民追い出しを許さない!
八月二日、横堀部落の盆踊り大会が行われ、会場の横堀農業研修センターには地元の熱田さん、下山さん始め、今年も多くの人々が集まった。
昼過ぎから、田んぼくらぶやじゃがいも運動の仲間たちが、農業研修センター中庭の草刈りや盆踊りのやぐら作りなどの準備を行った。
七時から始まった盆踊りでは、区長の下山さんが「今年もこの地で盆踊りが出来ました」とあいさつした。時折、暫定滑走路からの飛行機が轟音をあげて真上を通り過ぎる。焼き鳥などの屋台も出る。盆踊りの合間には花火やスイカ割りなどで盛り上がった。
翌日は朝からやぐらの片づけを行ったあと。田んぼくらぶの仲間は鳥よけのネット張りの作業、横堀団結小屋維持会の仲間は小屋のまわりの草刈りなどの作業を行った。田んぼくらぶの田んぼのまわりではまた新たな工事が始まっている。空港公団の民営化前に駆け込むかのように住民追い出しのための既成事実の積み重ねが行われている。現地と結びついた運動の強化を。 (板)
読者からの通信
携帯電話鉄塔建設反対運動と脱WTO草の根運動が交流会
福島 T・W
七月二十六日、福島県郡山市の一農村地区・多田野地区で「可能性を秘めた」催しがあった。この多田野において、NTTドコモによるカネと権力と暴力を行使した強引な携帯電話基地局(鉄塔)建設に対し、移転を求めて闘ってきた一農民と、脱WTO草の根キャンペーン、電通労組を中心とした労組、ATTAC・ジャパン、日本消費者連盟などの人々との交流会が行われた。地元農家の心のこもったおにぎりなどの料理をパクつきながら、反対運動の代表・中村さんの、冬には白鳥が飛来する無農薬有機栽培の水田をながめ、ドコモの建てた鉄塔を見学した。
私は、地元郡山市の一住民で、縁あってこの反対運動に関わってきた。地方都市とはいえ、「農村部」と「都市部」に地域として離れている。「都市部」よりに住む私も、この運動と関わることもなければ、この多田野には、そう足を運ぶこともなかったろう。
鉄塔を見つめ、これまでの闘いに対する思いが頭をよぎった。
私の場合、それほど現地をひんぱんに訪れているわけではないので、実力闘争の時ぐらいはささやかなお手伝いをしたい、と思い、警察・ガードマン・ドコモの責任者、大文字とかいう奴には、思いつく限りの「イヤガラセ」をやらせてもらった。大文字につかまれた腕のかすかな痛みもまだ覚えている。
鉄塔の下、私はかの三里塚開港阻止決戦の「三・二六」戦士につぶやいた。
「管制塔より、すぐにでも『占拠』『破壊』できる場所なんだけれどね……」。
三・二六は私の小学生の時の話である。あれから年月が経って、この国の民衆の「暴力」に対する意識は変化したかも知れない。ジョゼ・ボベさんの「マクドナルド破壊」に対して、「なぜそんなことをするのか?」と言う、日本の若者の意思が多くあったと聞く。
もしいま、この目の前にある鉄塔を破壊したら、郡山市民はどう反応するだろうか? マスコミあたりは、さしづめいまなら「テロ行為」などと騒ぎたてるだろうか? 考えてはみたが、どうも有効な展望が開けそうになかった。とりあえず私は、自衛隊の基地ばりにフェンスで覆われた鉄塔に、おもいきり石をぶっけてみた。ガーンという音が、辺りに響きわたった。
今回この地を、地元・近県他、東京から多くの人々が訪れた。それぞれの人々に立場の違いがある。食の問題を訴える人々、環境の問題を訴える人々、経済の問題を訴える人々、労働環境の問題を訴える人々。しかし面白いことにこれらの人々は常にどこかで結びついている。
それらが社会構造の問題だから当然である。現在、この国の社会運動の多くはきぼりされてきたかも知れない。それまで別々の部分で闘ってきた人々が、他の問題と自己の問題が関連しあってると認識でき、互いに手を結びやすい状況が生まれている。危機ではあるが、チャンスでもある。
農村と都市部が問題を共有化できる素地ができた。そして、こういった問題が世界の経済システムと不可分である以上、東北の一農村の問題が、世界の問題となる可能性を秘めている。この交流会は、その可能性の出発点になるかも知れない、と私は思った。
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