天才女子高生サックス奏者・寺久保エレナ、世界へ飛び立つ…「東京ＪＡＺＺ」出演

「東京ＪＡＺＺではどんなステージにしようか」と頭を悩ませているという寺久保エレナ

　天才女子高生サックス奏者・寺久保エレナ（１８）が、アジア最大級のジャズイベント「ＴＯＫＯＹＯ　ＪＡＺＺ　ＦＥＳＴＩＶＡＬ」（９月３～５日、東京国際フォーラム・ホールＡ）に出演。最終日に世界的ベーシスト、ロン・カーター（７３）らとタッグを組むことになった。札幌出身の寺久保はピアニスト・山下洋輔（６８）から“ノース・バード（北のチャーリー・パーカー）”と呼ばれる新星。スポーツ報知のインタビューに「世界で活動したい」と夢を語った。

　北の大地に生まれた新星が大舞台に立つ。

　「東京ＪＡＺＺは小学校の時からテレビで見て、録画して繰り返し見ていた。まさか、自分が出られるなんて、夢みたいです」

　こう寺久保は声を弾ませた。

　０２年にスタートした「東京ＪＡＺＺ」は今回で９年目。寺久保は女性プレーヤーをフューチャーした「ＷＯＭＥＮＩＮＪＡＺＺ」と題する最終日、９月５日の午前１１時から出演。ロン・カーター、ウィル・ブールウェア（ピアノ）、オマー・ハキム（ドラム）という一流ミュージシャンの胸を借りて演奏する。

　「皆さん大御所ばかり。ロンさんから見たら、私なんて初心者。まだ具体的には決まっていないけど、お客さんと一体になれる楽しいステージにしたい」

　大舞台を前に意気込んでいる。

　６歳からピアノを習い、９歳の時にアルト・サックスに出合った。知人からサックスを演奏するチョコレート「Ｍ＆Ｍ’Ｓ」のキャラクター人形をもらったことがきっかけだ。

　「形が『かっこいいな』と思った。たまたま、いとこが使っていないサックスを持っていたので貸してもらったんです」

　１０～１５歳まで札幌のジュニアジャズオーケストラに参加した。

　「最初はフュージョン系を演奏していたんですが、小６の時に（名サックス奏者の）チャーリー・パーカーの楽譜を紹介してもらって、夢中になった」

　その後は史上最年少の１３歳で「ボストン・バークリー音楽院アワード」を受賞。中３から高２まで３年連続でバークリー音楽院に短期留学。小学生時代から注目を集めていたが、今年６月、アルバム「ノース・バード」で待望のデビューを果たした。この中では「いつか王子様が」「Ａ列車で行こう」というスタンダード曲も収録している。

　「アレンジはこだわってみました。全部じっくり聴いてほしいけど、オリジナルの２曲は特に」

　出来栄えには自信を持っている。

　アルバムのタイトル曲は山下洋輔が提供した。「バード」はパーカーのニックネームで、山下の期待度が見て取れる。

　「大げさだな、と思った。気にいっていますけど」

　後押しするのは山下だけではない。大御所サックス奏者の“ナベサダ”こと渡辺貞夫（７７）もバックアップする。

　「尊敬しています。楽器を貸してもらったり、指導も受けました。一言でいうと、『クラシックを練習しろ』ということです。渡辺さんは若い頃、１２時間練習していたそうです。私も暇さえあれば、吹いていますが、自宅はアパートなので、練習は午後９時まで。その後は作曲していますね」

　天才と呼ばれることについては冷静に見ている。

　「まだまだですね。女子高生でそれなりに技術があるということで注目されているんだ、と思う」

　目標はモダンジャズの父・パーカーだ。

　「独自の音楽を見せてくれた人。即興はジャズの魅力。自分には理想の音楽の形があるけど、今は０・１％くらい。自分しかできないアドリブを見せたい」

　普段は明るい女子高生。だが、学業との両立は大変だという。

　「得意なのは英語。日常会話？　う～ん、何とかコミュニケーションは取れるけど…卒業後は留学したい。東京ＪＡＺＺでは世界中からミュージシャンが集まります。英語は頑張らないと」

　“ノース・バード”の視線の先には世界が見えている。

　◆パワフル４曲　〇…寺久保は２４日、東京・青海の「ＭＥＧＡ　ＷＥＢ」で東京ＪＡＺＺのプレイベントであるフリーライブに出演した。アルバムタイトル曲「ノース・バード」ほか４曲を演奏。パワフルな音色で魅了した寺久保は「ここだけでしか聴けない新鮮なステージをお見せできた。ツアーではアルバムに近い雰囲気で演奏するつもり」と話した。共演のベーシスト・水谷浩章はツイッターで「いやぁ、ぶったまげた。スーパー女子高生ですね。エレナちゃん。面白かった」とコメント。

　◆寺久保　エレナ（てらくぼ・えれな）本名同じ。１９９２年４月３０日、北海道・札幌生まれ。１８歳。トランペッターの日野皓正、ハービー・ハンコックら国内外のミュージシャンの指導を受けて成長。デビューアルバム「ノース・バード」は３月、米ニューヨークで録音。ピアニストのケニー・バロンらが参加。３０日から東京・六本木のＡｌｆｉｅをスタートに札幌、京都、名古屋、東広島、大阪を巡る。

　◆チャーリー・パーカー　１９２０年８月２９日、米カンザスシティー生まれ。４０年代からアルトサックスをプレーし、「モダンジャズの父」と言われた。「ヤードバード」の異名で呼ばれ、そこから「バード」がニックネームに。「ナウズ・ザ・タイム」「コンファメーション」など現在でも演奏される名曲を数多く作曲する一方、麻薬、アルコールにおぼれて入退院を繰り返し、５５年３月１２日、３４歳の若さで亡くなった。その生涯を描いた映画「バード」（８８年、Ｃ・イーストウッド監督）も有名。

　◆東京ＪＡＺＺ　毎年、夏に開催されるジャズコンサートで２００２年からスタート。当初は味の素スタジアムを舞台に行われたが、０４年から東京ビッグサイト、０６年からは東京国際フォーラムを会場としている。国内外の大物ミュージシャンが出演し、過去にはハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ＴＯＴＯ、チック・コリア、今年５月に亡くなったハンク・ジョーンズさんらが登場した。