【コラム】サムスンほどの会社が…(上)

 ソウルにいる会社の後輩から連絡が来た。「最近買って読んでいる本に掲載されている写真が、うちの新聞に掲載された写真みたいだ」という。ファクスで送ってもらった写真を見たところ、数年前に岐阜県へ出張に行ったとき撮影し、本紙に掲載した写真だった。著作権は当然、朝鮮日報社にある。「韓国はいまだにこの程度なのか」と尋ねたところ、後輩は「サムスンが作った本だ」と言って笑った。問題の本は、サムスン経済研究所が今年3月に出版したものだった。

 記者は早速、写真を掲載した経緯について尋ねる電子メールを送った。3時間後、「当方のミスで、著作権の表示が抜けていた。申し訳ない」という返信が来た。メールは丁重なものだったが、あきれるのは、出版してから5カ月もの間、著作権の表示を忘れていたということだ。韓国で出版業を営む友人に聞いたところ、「日本にいるから、韓国の状況も忘れてしまったのか。韓国へ帰ってきたら、頭に来ることが多いと思う」という答えが返ってきた。日本では著作権の保護体制が厳しいため、芸能人の写真をインターネット上で見るのも難しいほどだ。

 サムスン経済研究所が出版した問題の本で、写真の横の本文を見ると、昨年亡くなった日本の企業経営者が、「現職の会長」と書かれていた。「サムスンがこの程度だなんて…」という考えを引っ込めようとしたものの、「それにしても、サムスンほどの会社が…」という考えがよぎった。恐らく、ほかの企業だったならば、気にも止めなかったことだろう。サムスンに対する特別な意識から来るものだと思うが、日本に長くいると、誰でもサムスンに対する愛着が生まれるものだ。冬季オリンピックで日本の選手に勝ったキム・ヨナに対する愛情と似たようなものだろう。

 韓国を襲った2度の経済危機の当時、記者は偶然にも日本にいた。1997年のアジア通貨危機のときに見た、あるニュースの場面は、くぎのように胸に刺さり、今でも忘れられない。韓国のある自動車会社が、欧州のメーカーの車をまねた車を欧州で販売し、抗議されたというニュースだった。当時、日本のニュース解説委員はこう言った。「韓国はあのようなことをした結果、没落した」と。あざけりと軽蔑(けいべつ)に満ちた表情と話し方が、印象に残っている。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る