開城工団:脅迫するも閉鎖に踏み切れない北朝鮮(上)

 哨戒艦「天安」の沈没事件後、南北関係がさらに緊迫化する中、開城工業団地が注目を集めている。同団地に勤務する韓国の労働者を、北朝鮮が人質に取る可能性が高いからだ。しかし北朝鮮は、実際に開城工業団地の閉鎖には踏み切っておらず、脅迫だけにとどまっいる。

 その理由は、北朝鮮が当面必要とする現金収入と、4万人の労働者、将来の北朝鮮経済の「頼みの綱」が、開城工業団地に懸かっているからだ。対南工作部署出身のある脱北者は、「北朝鮮が開城工業団地で事業を始めたのは、現金を稼ぎ、有事の際には大規模な人質確保が可能なため」と語った。太陽政策を受け入れるふりをして、本当は別の狙いがあったというわけだ。

 開城には工業施設がなく、軍の施設のため農業の振興も困難だ。そのため、開城工業団地が閉鎖された場合、保衛部が選抜した4万人の中心階層が飢餓状態に陥る。

 毎月入るおよそ400万ドル(約3億5000万円)の現金も、簡単には手放せない金額だ。国家保衛部は、開城工業団地の中心人物を選び出すため、それまで開城に住んでいた人々を外部に追放し、平壌などで労働者を注意深く選抜し、開城工業団地に送り込んだ。

 問題は、開城工業団地で働く労働者らが、韓国企業に対する幻想や感謝の念を自然と抱き始めている一方で、北朝鮮が先んじて開城工業団地を閉鎖すれば、北側の労働者を怒らせることになる、という部分だ。

 元高官のある脱北者は、「思想で武装した人々を開城に送り込んだが、韓国企業に対する幻想が高まったことから、保衛部は頭を抱えている」と語った。韓国企業は60ドル(約5246円)支給しているのに、実際に自分たちの手元に届くのは2-3ドル(約174-262円)しかないということも、既に一部では知れ渡っている。

 それにもかかわらず、平壌市など中心階層の労働者が自ら開城工業団地に行きたがる背景には、また別の理由がある。北朝鮮の大多数の企業は、稼働が中断しているため月給すら出ないが、開城工業団地では、韓国企業から月給を上回る恩恵を受けることができる。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る