大鵬超え４６連勝でも、輪島超えＶ１５でも白鵬不満！「どうにか賜杯」…名古屋場所１４日目

白鵬は日馬富士（右）をすくい投げで下し、大鵬を抜く歴代３位の４６連勝目。優勝に花を添えた

　◆大相撲名古屋場所１４日目（２４日・愛知県体育館）　横綱・白鵬が賜杯なきＶ１５に不満を爆発させた。大関・日馬富士をすくい投げで破り１４連勝。大鵬を抜く昭和以降で歴代単独３位の４６連勝で輪島を抜き歴代６位の３場所連続１５回目の優勝を決めた。両手に花の支度部屋だったが協会が一連の野球賭博問題で天皇賜杯を辞退したことに不満爆発。場所前にも同様の発言を行った最強横綱。すべてのうっぷんを千秋楽の土俵にぶつけ史上初の３場所連続全勝優勝を決める。

　天皇賜杯なき優勝に、白鵬に笑顔はなかった。普段は優勝したことで綱の責任の重圧から解放され、安どの表情を浮かべる支度部屋でも下を向いたままだった。Ｖ１５の喜びを語ることもなく「もらえるものをもらえないのは残念。どうにかならないのかねえ。賜杯頼みますよ…」と自ら切り出し、不満を口にした。

　この日は、立ち合いで日馬富士とがっぷり四つに組み、今場所最長の４２秒３を要したが、最後は豪快なすくい投げ。名古屋場所３連覇を達成した。連勝記録を「４６」に伸ばし大鵬を抜き、昭和以降で単独３位に。輪島の優勝１４回も抜き単独６位になった。それでも、場所前の不祥事により賜杯などを辞退したことに「国技をつぶす気か」と発言して以来、白鵬がずっと抱き続けてきた心のモヤモヤは晴れることはなかった。

　ほかの競技にも天皇賜杯は存在する。だが他競技が天皇杯と呼ぶのに対し、相撲だけが賜杯という。「天皇賜杯はほか（の競技）にないでしょう？」と憤った。部屋関係者も「場所中も賜杯をもらえないことを相当こだわっていました」と証言する。更に白鵬は「もし今場所で初優勝の人が出ていたらどうなったんだろう？　それを思うと寂しくなる」と話した。村山弘義理事長代行は「残念だという思いなんだろう。非常によくわかる。残念だという気持ちを持って来場所は頑張ってほしい」と語った。

　そんな中でも横綱は「一番うれしいのはお客さんが応援してくれること」と前を向いた。言葉通り、いつもは体育館を出るとすぐに車に乗るが、この日はファンの間を通ってから乗り込んだ。最後に、賜杯だけはあり続けてほしいかという問いに「そうだね」と寂しそうにうなずいた。場所後すぐの２６日にはモンゴルに帰国する予定。その前に千秋楽の土俵の上で結果を残し、年６場所制となった１９５８年以降では史上初の３場所連続全勝Ｖを達成する。

　◆名古屋場所連覇　白鵬は３連覇。１９５８年の年６場所制以降で名古屋の連覇は４年連続が最高。８６～８９年の千代の富士。９５～９８年の貴乃花。０４～０７年の朝青龍の３人が記録。

　◆天皇賜杯　１９２５（大正１４）年４月に摂政宮（当時。後の昭和天皇）の誕生日を祝賀する台覧相撲が赤坂の東宮御所で行われ、その下賜金をもとに作成された。銀製で大きさは高さ１０７センチ、重さ２９キロ。優勝力士は賜杯を贈呈されると当日中に協会が厳重に保管する。代わりに銀製のレプリカが与えられる。また賜杯には優勝力士の栄誉をたたえしこ名を刻印した銀製の名札が付けられる。

　◆白鵬　翔（はくほう・しょう）本名ムンフバト・ダヴァジャルガル。１９８５年３月１１日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。２５歳。宮城野部屋。２０００年１０月来日。０１年春場所で初土俵。０４年夏、新入幕。０６年春場所後に大関。０７年夏場所後に第６９代横綱に昇進。優勝１５回。殊勲賞３回、敢闘賞１回、技能賞２回。金星１。得意は右四つ、寄り、投げ。家族は夫人と１男１女。１９２センチ、１５４キロ。