きょうの社説 2010年7月25日

◎学校の耐震化 「危険な建物」を最優先に
 全国の公立小中学校の校舎や体育館を対象にした今年4月1日現在の耐震調査で、石川 県の耐震化率は68・3%、富山県は66・8%となり、いずれも全国平均(73・3%)を下回った。

 見過ごせないのは、耐震診断の未実施や耐震性が不十分など問題のある建物が石川で4 41棟、富山で431棟あり、このうち震度6強の地震で倒壊の危険性が高い建物がそれぞれ129棟、75棟残っていることである。本来、最も安全であるべき場所に適切な措置が講じられていないのは行政上の不備と言われても仕方ない。

 耐震化率は神奈川の96・1%を最高に、静岡、宮城、三重、愛知県が90%を超え、 東海地震の被害が想定される地域や過去に大きな震災があった県が高い。文部科学省は自治体のばらつきについて「財政状況だけでなく、危機感の違いも表れている」と分析している。

 あらゆる地震対策の中で最も重要なのは、揺れに弱い建物の耐震補強であり、これは阪 神大震災など過去の震災の教訓でもある。学校施設は住民の避難所にもなり、耐震化は地域防災の要といえる。たとえ財政状況が厳しくても後回しにはできない。倒壊の危険性が指摘される建物については最優先で取り組む必要がある。

 2008年5月の中国・四川大地震で多くの学校が倒壊し、子供が犠牲になったのを受 け、政府は地震防災対策特別措置法を改正し、学校の耐震改修に対する国の補助率を引き上げた。今年度は政府予算の予備費の活用も決まった。02年の耐震調査開始以来、今回の耐震化率が最も高い伸びを示したのも、国の支援拡充があったからである。

 特措法の補助金かさ上げ措置は来年3月末が期限だが、加速してきた耐震化の流れを止 めないためにも、政府には引き続き自治体への手厚い支援策を求めたい。

 学校の耐震化が進まない背景には、少子化に伴う統廃合問題もある。地域にとっては極 めてデリケートなテーマで、廃校になるかもしれない建物への予算投入は判断が難しいだろう。だが、学校をいつまでも危険な状態にしておくわけにはいかない。現実を見据えた議論を地域で重ねてほしい。

◎22年W杯招致 五輪の失敗繰り返さず
 サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)招致を狙う日本に対する国際サッカー連 盟(FIFA)視察団の調査が終了し、視察団長は日本の開催計画について「バランスが取れている」との見方を示した。北陸でも既に金沢市が出場チームのベースキャンプ地に名乗りを上げているだけに、この高評価は心強い限りである。

 ただ、気掛かりなのは国内の空気だ。昨年は五輪招致で東京が苦杯をなめたが、かねて から指摘されていた「外交下手」に加え、国内世論の盛り上がりでほかの都市に遅れをとったこともその一因と指摘された。W杯でも同じ失敗を繰り返してはならない。開催地が決まる12月2日のFIFA理事会に向け、日本招致委員会には、周到なロビー活動などとともに、招致の熱気を国全体に広げる努力を求めておきたい。

 幸い、今月11日に閉幕したW杯南アフリカ大会で、日本代表が前評判をいい意味で裏 切る活躍を見せてくれたばかりである。決勝トーナメント進出の原動力となった岡田武史監督の大胆な戦術転換や本田圭佑選手(星稜高出身)らの鮮烈なプレーは、いまだに記憶に新しい。「あの感動を今度は日本で」。今、そう呼び掛ければ、共感を覚える国民は少なくないに違いない。

 経済以外にもさまざまな面で大きな効果をもたらした02年の日韓大会の記憶も、まだ 消えてはいないはずだ。特に、クロアチア代表のキャンプ地に選ばれた富山市のように、何らかの形で大会にかかわった地域ではそうだろう。国を挙げて招致に取り組む機運に火を付けるのは、五輪の時ほど難しくはないのではないか。

 遠い南アの地で死力を尽くした本田選手らの姿は、多くのサッカー少年に夢と希望を与 えた。22年のW杯開催が決まれば、そんな子どもたちの格好の目標となり、競技力向上の観点でも間違いなく効果的である。近年、日本を覆っている閉塞(へいそく)感を打ち破るきっかけの一つにもなろう。できることをすべてやり尽くして、チャンスをぜひともつかみたい。