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【編集局デスク】

ちょっと不可解

2010年7月24日

 近ごろ、何だかよく理解できない事件や出来事が続く。例えば、大韓航空機爆破事件の実行犯、金(キム)賢姫(ヒョンヒ)元北朝鮮工作員の日本訪問である。どうしてこれほどの厚遇をしなくてはいけないのか。準国賓級の警備体制だった。

 他紙の報道によると、通過する信号は青に切り替えられ、本人の希望でヘリコプターによる「富士山遊覧飛行」まで楽しんだという。元工作員の爆破で犠牲になった百十五人の家族の心中は穏やかではあるまい。そこまでして元工作員を招く必要があったのか。

 韓国哨戒艦沈没事件で、朝鮮半島情勢が緊迫化するこの時期にピントがずれているのではないかと各国から思われかねない。拉致被害者救済へもっと有効な対策を考えられないものか。

 もう一つ違和感といった方がいいかもしれないが、愛知県警が摘発した参院選愛知選挙区の公選法違反(供応)事件である。前愛知県議夫妻が逮捕された。知人の男女十四人に投票と票のとりまとめの報酬としてみそ煮込みうどんなど一人千数百円の接待をしたとされる。供応に使った金の総額は約二万円で「この程度でも逮捕されるの」と担当記者に聞いたら、こんな返事が返ってきた。

 「この夫婦は警察の捜査に気づいて口裏を合わせようとしたらしい。つまり証拠隠滅の疑いがあった」

 このところ、汚職など知能犯罪の摘発が少ない愛知県警の点数稼ぎかと思ったらそうでもないらしい。

 明治の昔、藤村操という一高生が日光華厳の滝の木を削って「巌頭の感」を墨書し、投身自殺した。

 「万有の真相は一言にして悉(つく)す。曰(いわ)く『不可解』」

 いやそんなことはない。なぜ、こんなに暑いのか、昨日の本紙夕刊一面は上手に説明していた。この際、ほとんど新情報のなかった金元工作員招致の訳を納得できるよう教えてほしい。

 (名古屋本社編集局長・志村 清一)

 

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