４６連勝も賜杯なく…白鵬「残念でつらい」Ｖ

すくい投げで日馬富士を下し、大鵬の記録を抜く４６連勝で名古屋場所を制した白鵬 Photo By スポニチ

　大相撲名古屋場所１４日目は２４日、愛知県体育館で行われ、横綱・白鵬が３場所連続優勝を決めた。優勝回数は１５回となり、輪島を抜いて単独６位となった。取組前に２敗の豊真将が敗れたため、その時点で優勝が決定。結びの取組では日馬富士をすくい投げで下し、初場所１４日目から続く連勝を４６として、大鵬の４５連勝を抜いて昭和以降で単独３位となった。賭博問題で揺れる名古屋場所で圧倒的な強さを見せた白鵬は、２５日の千秋楽の把瑠都戦で、１５日制になってから史上初の３場所連続全勝優勝の快挙に挑む。 【取組結果】

　表情はなかなか崩れなかった。優勝の感想を聞かれた白鵬は「まあ全然だね」。輪島を抜く歴代単独６位となる１５回目の優勝。大鵬を抜く昭和以降の単独３位となる４６連勝。大記録を作ってもこみ上げるのは苦い思い。「やることはやった。なのに、もらえるものをもらえないのはつらい。残念だ。天皇賜杯、何とかならないんですか」。優勝力士に与えられる最高の栄誉、天皇賜杯を千秋楽に抱くことができない事実に恨み節を口にした。

　２敗の豊真将が徳瀬川に破れ、取組前に３連覇が決定。結びの一番では日馬富士を相手に右四つがっぷりの体勢から、最後は左上手を離して豪快にすくい投げ。土俵で絶対的な力の差を見せても、心は晴れなかった。

　賭博問題で揺れ続ける名古屋場所。専属トレーナーが仲介役を務めていたことに加え、筆頭付け人が野球賭博に関与。自身も軽微ではあるが、花札賭博をしたと認めた。だからこそ、充実した相撲を見せる覚悟だった。

　初日前日の１０日。土俵祭りに参列後、宿舎に戻ると、昼寝の時間を惜しんで稽古場に現れ、一人黙々としこ、てっぽう、すり足を繰り返して汗を流した。初日前日は稽古を休むのが通例。異例の行動に並々ならぬ意欲が垣間見えた。

　相撲界への批判が渦巻く中、ファンの信頼を取り戻しつつある自負はある。この日は今場所３回目の満員御礼。横綱土俵入りの際に「大横綱！」と声も上がった。「一番うれしいのは、お客さんが来てくれたことだ。それがなかったら、もう終わりだよ」とつぶやいた。会場を後にする際には車を普段よりも約５０メートル離れた位置に止め、沿道で待つ大勢のファンに左手を振って歩いた。「努力していれば報われる」。やっとほおが緩んだ。

　千秋楽の把瑠都戦に勝てば１５日制導入後初の３場所連続全勝優勝。一人横綱となった春場所から一度も負けていない。年明けに第３子が誕生予定という“ご褒美”も届いた。「こんな時期だけど、授かった命だから喜びたい。でもね、今場所は本当にきつかったよ」。大きな試練を乗り越え、無敵の道を突き進む２５歳が一回り大きくなった。

　≪表彰式は簡素に≫名古屋場所は２５日に千秋楽を迎えるが、天皇賜杯、内閣総理大臣杯の授与など、恒例となっている幕内優勝力士への表彰は行われない。通常は弓取り式が終わった後に、土俵上で多くの企業などによる表彰が続く。しかし、今場所は野球賭博問題に配慮して、日本相撲協会がすべての表彰を辞退した。大幅に簡素化される表彰式では、優勝した横綱・白鵬に表彰状と優勝旗のみが授与され、続いて三賞の授与式が行われる。

　▼村山弘義理事長代行　天皇賜杯がないことを白鵬が残念に思う気持ちはよく分かる。その残念という気持ちを、協会員全員が９月の（秋）場所につなげて、立派な場所にしてほしい。

[ 2010年07月25日 ]