琴欧洲を上手投げで下し、大鵬に並ぶ45連勝を達成した横綱白鵬=愛知県体育館で
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◇名古屋場所<13日目>
横綱白鵬(25)=宮城野部屋=が大関琴欧洲を左上手投げで退けて全勝を守り、連勝記録で昭和以降で3位の大鵬の45に並んだ。14日目に白鵬が大関日馬富士に勝つか、2敗を守った平幕豊真将が3敗に後退すると、白鵬の3場所連続15度目の優勝が決まる。琴欧洲は9勝4敗。関脇稀勢の里は豊真将に押し出されて7敗目。関脇琴奨菊は小結白馬を寄り切り5勝目。十両は将司(26)=入間川部屋=が12勝1敗で優勝を決めた。
あこがれの大記録に並んだ白鵬だが、会心の笑顔はなかった。昭和の大横綱、大鵬と同じ45連勝。「少しはうれしいけど、こういう場所で並んだのがちょっと残念」。世間の批判にさらされ、テレビ中継もない名古屋場所。自身の連勝もなかなか注目されない中での快挙達成を、心から喜ぶことはできなかった。
ただ、慕い続けた大鵬に肩を並べることに、緊張は隠せなかった。支度部屋でいつにも増して体を動かし、立ち合いでは珍しく待ったをした。「意識がないと言ったらうそになる」。それでも内容は圧巻の横綱相撲。すぐに左上手をがっちり握って十分の右四つになると、琴欧洲の苦し紛れの下手投げを余裕で残し、最後は上手投げで仕留めた。
「剛の柏戸と柔の大鵬、両横綱の良さを兼ね備えてほしい」と、“柏鵬”と白い体にちなみ白鵬のしこ名が贈られた。その意味を、大嶽部屋に飾ってあった若き大鵬の写真を見て教えられ「姿が自分にそっくり」と衝撃を受けた。その大鵬と親交が始まり、横綱になってからは横綱道も伝授される仲に。不思議な縁で結ばれた横綱の大先輩に「これで恩返しできたかな」と、ほっと息をついた。
残るは15回目の優勝を、15日制後では史上初となる3場所連続全勝で飾るのみ。「連勝は(大鵬と)やっと並んだので気楽に行きたい」。14日目に勝てば優勝は決まるが、いつもの賜杯を抱けないことには、あらためて不満を見せた。「賜杯だけは何とかならないのかな。国技だからね」。国技の看板を一身に背負うと自負するからこそ、あふれ出る思い。「笑顔はないね」。複雑な感情を抱えたまま、白鵬が有終の美へ向かう。 (田中一正)
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